日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

夜の美術館

せっかくの金曜日、このまま帰宅するのも惜しいので、美術館にでも行くこととする。ということで森美術館。東京から山手線で有楽町に出て、日比谷線で六本木。映画にも惹かれつつ、しかし宇宙戦争は丁度上映開始時間が過ぎたばかりなので止して、100円也のコインロッカーに荷物を預け、MAMCのカウンターでチケットを受け取り、ついでにフィリップス・コレクション展の追加チケット500円也も購入してエレベータの人となる。
まず、『フィリップス・コレクション展』から。アートの教科書と銘打ってある通り、本当に教科書で見たことのあるような作品ばかり並び、かつ、宗教画から写実、印象派、抽象画、彫刻に至るまで、実に懇切丁寧な解説つきで、絵画の歴史変遷を解りやすく俯瞰させてくれている。ちょっと丁寧すぎやしませんか、という感じだが、とにかく、教科書だとしたらこんな贅沢な教科書も無いもんだ、という内容。見て損は無し。やっぱり、ルノワールの『舟遊びの昼食』は見応えがあります。
次に、『中国・美の十字路』へ。後漢にはじまり、北方民族の襲来、西方からの文化、仏教美術の伝来、そしてそれらが昇華される唐代まで、これまた贅沢に一級文物を並べてあって、中国政府に幾ら…いや、ごほごほ、とにかくお金が掛かっていることは間違いが無い。中国という国、いや、明確な王朝の正統性があるわけでは無いのだから地域と言った方が良いか、その中国が外部からの影響を常に極めて敏感に受けてきた多民族国家であるのだなあ、ということを実感できる。暫し大陸の人々の気持ちに同化して、時代とともに流入してくる文化、自ずから花開かせる文化の足跡を共に刻めるような展示構成で、これも見応えあり。
最後に、『新しい世紀の中国現代美術』へ。当初、なんで唐の美術と現代美術を並べてあるのかと思ったが、順番にじっくり見ていくとなんとなく解ってくる。周辺民族、国家の影響を受けて美術に反映させていった後漢から唐の頃と、西欧の影響を強く受けて生み出される現代美術、というのを対置させたかったのですね。実際、西欧の影響と自我を意識した作品が多かった。んで、こちらのほうだけど、妙に観念的と言うか、コンセプト優先の作品が多い。作品についている解説が五月蝿い。そりゃそうだろうけど、的な当たり障りの無い解説がいちいちついていて、解釈を強要している。そんなに親切にしなくても…。なかでは、都会の中に取り残された集落に関する映像作品が面白かった。
3つの展覧会、共通して、説明過剰と言うか、「こう見てください」の意志が強いように感じた。展示のコンセプトがそういうものだったのかもしれないけど、ちょっとカッチリしすぎのような印象を受けた。
んで、展望台に寄って、カップルばっかりいるのを横目で眺めつつ、
飽きも

せずに

写真を

撮る。最近、長時間露光が面白くて仕方ない。しかし、人目も気にせずべったり抱き合ってるのとか、おもむろに膝をさすり出すのとか、どーなんでしょーね、一体全体。まあいいや。蕎麦で腹も減らぬので、何も食べずに帰宅。