日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

古きよき時代

尾山台の駅で降りるのは初めて。いい感じの商店街が延びている。この駅で降りたのは、そう、ふふふ、もちろん、昨日言及した洋菓子店に行くためなのだよ。なお、表題は店の名の日本語訳である。
フェデリコ・カルパッチョ氏の本から引用するならば

Au bon vieux temps”は一口では食べきれない、いや違った、一口では語りきれない深みと技と感性と比類なき情熱と他にはみられない創造力とまごうかたなき独自性とここならではの想像力と他の何ものにもかえられないオリジナリティと比肩するもののないイマジネイションと脱帽するしかないパッションとインクレディブルなテクニックとアンクロワヤーブルなデコラシオンとスプレンディッドなシュペリオティを持っている。

あ、いや、かえって胡散臭くなったことはお詫びしたいのだが、そのつまり、この歯に衣着せぬガイジンが、大層素晴らしいと言おうとしていることだけは確かなのである。
尾山台の駅から商店街を歩いて数分、暖かい色の、居心地のよさそうな店内に入ると、おお、ここは天国か。チョコレート、フルーツ系、焼き菓子、パン、膨大な種類の、どれもこれも美味そうな品々が所狭しと並んでいる。そしてショーケースにはケーキ。このケーキ、というか生菓子が、どれもこれも惚れ惚れするような美しい仕上げで創造性に溢れて…あ、いや、同じような文章になりかねないので端折るけれども、とにかくその見た目の美しさが比類ない。すげー仕事。
ここはホストクラブかしらん?というほどの沢山の若い職人さんが店頭に立っており、店で修行している若者なのだろう。じっくりじろじろ、幸せな気分で右往左往しつつ店内を徘徊していたが、いつまでも浸っているわけにもいかないので、焼き菓子とフルーツケーキを幾らか購入。チョコレートやケーキは次回に廻そうではありませんか、とひとりごちて、しかししかし去りがたく。
店内に喫茶スペースも小さいながらあったので、我慢できずに、『アリ・ババ』というラム酒漬けサバランと、紅茶を頼む。この紅茶が、また、美味い。そしてお菓子。少し押すとラム酒が染み出るほどで、口に含むとお酒も強いのだが、なんだろうか、ああ、う、う、美味い…。なんとも複雑な、幸せなお味。陶然として、慈しむようにチビチビと食べて、しかし何時かは無くなるのだった。
ああ、素敵なお店だった…幸せな気分のまま、そぼ降る小雨の中、電車を乗り継いで帰宅した。一人暮らしするなら尾山台も良い。オーボンヴュータンの情報はこちらで。
http://www.cakepia.info/shop/recommendation/au_bon_vieux_temps/index.html