日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

本当に本当に大丈夫か、汐留イタリア街

さて、本誌はこれまで、汐留のイタリア街(チッタ・イタリア→ヴィータイタリア→コムーネ汐留)の悲劇的喜劇を度々お伝えしてきたわけだが
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20041206#1148628306
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20051228#1135756718
そのイタリアの街に、とうとう、中核となるような施設が12月に出来たよ、という話をききつけた
http://homepage2.nifty.com/comune-shiodome/home.htm
『汐留イタリア クリエイティブ・センター』『イタリアと日本を中心に、多様なジャンルの新しくかつ秀逸なデザインを紹介、その魅力をあますところなく皆様にお伝えすることを目的としたデザインセンターです。』だそうである。これは行かねば、というわけで、もっとも賑わいそうな土曜日にやってきたわけである。

ご覧のとおり。なかなかの賑わいである。目立つのは警備員と新聞片手のオッチャン。まあ、ようするに、場外馬券売り場に来るオッチャンくらいしか居ないわけですが。

これが場外馬券売り場。悪い冗談ではないらしい。何を考えているのか良くわからない。この建物をはじめとして、言っては悪いが若干ハリボテ的イタリア建築が並んでいて、そして場外馬券売り場以外は閑散としている。

新しく出来たばかりの『汐留イタリア クリエイティブ・センター』も、ご覧のとおりほとんど人がいない。

いない。
いないのは仕方が無い。オープニング企画と銘打って、『イタリアの真摯な先達と出会い、そしてイタリアデザインを知る三つの展覧会を開催!』とあるので、共通チケット1200円なりを払って見物してみることにする。チケット売り場、私と売り子のおねーさんしかいないのに、ものすごくただっぴろくて閑散としていて…寂しい。
『イタリアデザイン界のマエストリ達』。28人のデザイナーの象徴的な作品を展示、ということなのだが、私以外にお客さんがいない。展示のほうも、デザインされた家具などはちゃんと並んでいるのだが、展示の仕方が安っぽい見本市みたいで、興を削ぐ。『各巨匠達に捧げられた』というビデオを各デザイナーごとのコーナーで見ることができるのだが、どうも見せ方が親切じゃないんだよなあ。
もちろん、作品の数々は本物できちんとしていることは請け負っておく。ビデオのほうも、デザイナーがそれぞれ真摯に語っていて(ひとしきり語った後にトーキーみたいな字幕が出る構成の難はおくとして)、じっくり見たならば学ぶものは多い。流暢なイタリア語を聴いてるだけでも気持ち良いし(多分に私の趣味ですが)。
エットレ・ソットサス 定理に基づいたデザイン』ここも私以外誰もいない。エットレ・ソットサスのデザインした家具自体は仰天するような品々で(しかし、今の視点で見ると変なチープさもあるのだが…)楽しいのだが、とにかく展示空間が殺風景で、白い間仕切り壁の間を縫っていくと、なんの解説もなしに作品がポンポンポンと置いてある、という風情。
『再現・1960・ミラノ』1960年のミラノ・トリエンナーレで、日本は金賞を受賞している。その展示空間を再現しつつ、ミラノトリエンナーレを振り返る、という展示。再現された展示空間はモダンで素敵なものなのだが、建てられたばかりのビルのはずなのに、音楽流しているのがラジカセとか、なんか変。というか、壁が明らかに完成していないんですが。これで仕上がりでいいんですか?というようなむき出し。コンクリ打ちっぱなしってレベルじゃねーぞ、という。本当にまだ完成してないのかも。ただ、ミラノ・トリエンナーレの歴史を振り返るパネル展示は面白かった。
でねー、最後のパネル展示を見ていて思ったのだが、どうもイタリアのデザインというのは、コンセプトで突っ走っている、最先端を行ってあとから見てチープになるようなものでも平気で作る、一点豪華主義であとは知らない、バランスよりインパクト、みたいな印象を受けるんですよね。や、これは本当に素人の独断なんですが。それで、今回の三つの展示全体のよくわからなさも、そういうイタリア気質みたいなものを体現している、メタレベルでもイタリアを表現しているのではないかな、と思います。そう思って、アンケートにも『メタレベルでイタリアを体現していると感じました。大変味わい深かったです。』と書いてみました。
見終わって、なんだかどっと疲れたので、お茶をすることに。フェラリーニという店に入る。北イタリアの食材屋さんらしい。
http://www.ferrarini-ifp.jp/
店内、食材の売り場の奥にイートインスペースがあって、とても広くて居心地がいい。椅子も座り心地良い。高い天井、オープンカウンターにはハリボテのパルミジャーノ・レッジャーノとプロシュートがたくさんディスプレイされている。しかし、やはりここも閑散とした店内。
アフォガードとエスプレッソを注文。アフォガードは、ジェラートの盛りが良いのは結構なことであるけれど、盛りが良すぎるために、エスプレッソを掛けてもエスプレッソが冷えてしまう。ただのエスプレッソ味アイスクリームになってしまう。アフォガードって、こういうバランスで良いのだっけ?それでも、まあ、美味しくいただく。
店内見回すうちに好奇心の虫が辛抱堪らなくなり、メニューを再度貰って眺めるに、パルミジャーノ・レッジャーノ、プロシュート、オリーブオイル、パスタ、バルサミコ…ああ、じゅるじゅる、食欲をソソラレル、なんか食おう。パルミジャーノ・レッジャーノと熟成期間の違うバルサミコ3種類、という一皿を頼む。1200円なり。
出てきたのは、ちょっとびっくりするようなチーズの固まり、ドライフルーツ、クルミ、そして、見た目もそれぞれかなり違う9年、12年、25年のバルサミコ。25年物、後で売り場で見たら100ccで3万円近くするらしい。無骨なチーズの固まり、いやさ大層美味そうなのだが、若干どうしたものか困惑していたら『バケットお持ちしましょうか』と給仕さん。ご好意にすがる。
チーズやパンにつけて食べてみると、9年モノはまだ酸味が強い。もちろん美味いのだが。12年になると途端にトロリ、として甘さが際立つようになり、25年になると味に深みが加わり、曰く言いがたい幸せ広がる、という感じ。ワインも欲しくなる所だが、止まらなくなるので水で我慢しつつ、これまた美味いチーズとバルサミコを慈しむように味わう。
暫くすると、スーツ姿の女性…おそらく店の偉い人なのだろう…がやってきて、店内を見回している。天気の良い土曜の昼下がりだというのにこの人の入り。そりゃあ、居ても立ってもいられないでしょう…。やがて一人でチーズとバルサミコを貪る変な客(まあ、ちょっと尋常じゃないよね…)に話しかけてきた。
展示会にこられたのですか?と言うので感想などを話して、失礼とは思いつつも『それにしても空いていますね…』と言うと、『そうなんですよ…土日は閑散としてます。平日も夜になると人がいないし…。展示会は、1万人くらい(一ヶ月に、か?)は来るって聞いていたのに』。おそらく、街だか建物だかの計画者からは、『展示会に客が来るだろうからこの店にも人が来ますよ』みたいに言われていたのだろう。そのアテが見事に外れている、ドウシテクレヨウ…というオーラ全開であった。本当にどうしたもんだろうか。
食材コーナーを眺めるに、美味そうなものが一杯並んでいて、お店の人も親切に説明してくれるし、良いお店だと思う。チーズとハムが大好きな人は是非行かれたし。もう一軒あるカフェも、素敵な家具やインテリアに囲まれた雰囲気の良さそうなカフェだった。
それにしても、汐留イタリア街、どうなっちゃんだろうか。少しずつだらだらとオープンしているのもインパクトが無くて良くないのだと思うし、それどころではない問題もたくさん抱えているような気がするし。