日毎に敵と懶惰に戦う

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三菱一号館美術館『バーン=ジョーンズ展』と国立近代美術館『吉川霊華展』

祝日、朝から元町公園プールへ。日差しが強く、かなり日焼け…

このままのんびりしていてもいいと思ったけれど、出かけようかな。中華街の新錦江で四川燃麺を食べて、桜木町まで来てみれば、海の日日本丸が豪華仕様

横浜駅まで出て、東京駅へ。三菱一号館美術館でバーン・ジョーンズ展を見る。
三菱一号館美術館 | 新しい私に出会う、三菱一号館美術館
物語、寓話を題材にした、装飾性を極めた作品の数々がとにかく美しい。運命の車輪はなるほど一頭地抜けていますが、連作「いばら姫」の、王宮の中庭で眠り続ける6点の習作に囲まれる部屋から、眠り姫が展示されている部屋への流れが素晴らしく、うっとり。ミノタウルスのいる迷宮に、骸骨が散らばっているのに花が咲いていたり、やや滑稽にすら見えることもありますが、花もまた重要な寓意が込められているのですね。バーン=ジョーンズ、挿絵も多く扱っていたことから美麗な装飾本も多く、本好きにも嬉しいかと。タペストリーもいい。

お城のような重厚な部屋に装飾性豊かなバーン=ジョーンズの作品の数々と本やタペストリ、途中の通路から見える中庭の木漏れ日と花々。三菱一号館美術館にぴったりな展覧会だと思いました。売店で英国的ガーデニングな立派なジョウロが欲しくなった。
普通なら国立近代美術館はここから歩くところだけれど、この暑さだとしんでしまいます、なので、地下鉄で竹橋へ。
展覧会情報吉川霊華展  近代にうまれた線の探究者
吉川霊華展を見る。びっくりしましたね、これは。細密でリズミカルな線の描き出すやまと絵の美しさ、そのクオリティにも勿論目を見張るけれど、それ以上に、霊華の学究肌、研究一途、探究心が面白いのだ。近代的な絵画における自我とか葛藤とはまったく別の場所に花開く美しき絵画世界。
会場入るとまず、巨大な龍の迫力に目を引かれますが、続く膨大なスケッチ、模写に関心が移る。神経質なくらいのスケッチや、甲冑の精密なスケッチ、絵画というか色指定見本か?みたいなスケッチを興味深く眺めて行くと、醍醐寺仁王経法本尊(西方)模写がある。これがすごい。本尊の模写というより、もはや虫喰いの状態調査と言っていいような、細部にわたる虫喰いの詳細模写になっている。ちょっと笑ってしまった。この吉川霊華という人は、画家というより、研究者なのではないか。
その目で、続く数々の絵を見ていくと、中国古典や日本の故事に題材を取った霊華の作品は、その細くて早くてリズムのある筆致がどんどん上達して完成度を極めていくんだけど、研究の過程でこんな技法も身につけたので作品にしてみました、論文替わりの作品にも見えてくる。霊華は大変な教養人、若くして文人の風格、であったらしい。いずれにしてもクオリティは素晴らしいので、ただただ、作品を眺めても面白いんですが、作品の題材含め、しっかりした解説があると何倍にも楽しめる展覧会だと思いました。特に知識人教養人の間で持て囃されて高値で流通した、といく話も頷けるのでした。
たまたま、友人に解説して回っている、おそらく館の関係者の方…?がいらっしゃって、失礼ながら興味深く漏れ聞きました。帝展に興味無かったけど名声が上がって無鑑査で出品できる権利を得たんだけど、そのおまけの正倉院に入れる権利が嬉しくて、正倉院に籠って模写してた話とか(笑)
常設については、いつも通り…というか、一時休館を前にして、いつも以上のクオリティだったんだけれど、特に良かったのが鏑木清方の『明治風俗十二ヶ月』揃い。縦に非常に細長い画面への構成の妙も含め、艶があって描写が良くて本当に素晴らしい。鳥肌物。これだけでも行く価値ありだなと。
帰宅して、NHKなどゆるゆる見ていた
在華坊(@zaikabou)/2012年07月16日 - Twilog