日毎に敵と懶惰に戦う

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『ヤマトタケル』を見る

日曜日、起き掛けにyoutubeを見ていて、えらいもんを見てしまった節も声もメロディも、踊りも、会場のようわからん盛り上がりようも、なにからなにまで素晴らしい。真にソウルミュージック。9時すぎに出かけて、銀座ソトコトロハス館の巴馬で朝粥の朝飯。そして、新橋演舞場
七月大歌舞伎 | 歌舞伎美人(かぶきびと)
市川亀次郎の市川猿之助襲名、そして香川照之市川中車で襲名披露の『ヤマトタケル』を3階席から見る。まず襲名した市川猿之助については全編大熱演でありまして、素晴らしい。中車は動きの少ない役どころで、威厳を示してはいたけれど、少々様子見…というか、歌舞伎とそれ以外の仕事をどう配分していくのか、もう少し見ていきたいところか。團子ちゃんはしっかりしてて良かった。
で、ね、これ、やはりスーパー歌舞伎なので、役者としてどう評価していいのかと言われるとそもそも微妙でありまして…。この『ヤマトタケル』。派手な演出と派手な衣装、エンターテイメント性の追求でスーパー歌舞伎の走りとなったこの演目なんですが、昭和61年初演、梅原猛による本なんだねこれは。なかなか一筋縄でいかない。襲名の話題性と、派手な舞台演出と、妙な台本、いろいろこんがらがっていて、どう評価したものか、よくわかんないんですよ。
ヤマトタケルってのは、要するに、征服王朝である大和王権の英雄譚を集めて、正統性を主張するための神話体系であるわけで。土着の豪族=国津神に対して、単に侵略者ではないか、という天津神大和王権ヤマトタケルの立場が、ミカドとの反目と絶望と孤独という彼本人の立場によってぼかされて…は、さっぱりおらんのです。特に市川猿之助の芝居においては。征服者としての正統性を主張する場面があってこれが真剣に言わせているのか、白々しく言わせているのか、猿之助の芝居がどう判断していいのかよくわかんないところはあるんだけれど…とにかく、拭いようのない、米と鉄の力による征服者侵略者たるヤマトタケルの孤独と絶望が色濃く漂うばかり。で、大熱演で素晴らしいとは言ったものの、この終始ベタッとした芝居をどうしたものか、困る。
で、一方で、熊襲、相模、蝦夷伊吹山の皆さんは、まあこれは政治劇なのかな、と誤解するほどに、自分たちの正統性を語る語る(笑)。歌舞伎の台本にどこまで意味を求めていいのかって部分を考えてしまうけど、梅原猛ですからねえ、そんな無意味な本を書いたとも思えないし。
ドリフか、というような部分もある立ち回りも終始派手で、衣装も豪華絢爛で、筋立てそのものは大変わかりやすいので楽しめるお芝居なんですが(一方で、終盤少しダルい部分もある)、いろいろ考えちゃいますね。
終わって、会社に行って仕事。帰宅して晩飯とする。昨日購入した鮒ずしで


うむ、うまい
在華坊(@zaikabou)/2012年07月15日 - Twilog