日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

今年一番面白かった映画

といっても劇場で見たのは10本以下だし、そもそもこれ、今年の映画でも何でも無いのだが、アトミック・カフェが非常に面白かった。サイトはここ。アメリカにおける原爆関係のプロパガンダフィルムを淡々と編集でつないでるんだけど、「ピカっと光ったらその場に伏せようね!いつも練習しておこう!」と亀のアニメで子供に教える映像や、「原爆ではげてしまっても大丈夫!かつらをつくりましょう」とか、あるいはこれは映像の世紀でも使われていたけど、原爆実験で兵士たちが爆心地に向かって無防備でぞろぞろ近づいていく映像とか。もう怖い怖い。アメリカ人の原爆に対する無邪気な姿勢は、こういうもので醸成されたのだなあ、と感心する。
さっき、「淡々と編集で」といったけど、編集者の意図は「淡々」でもなんでもない。あきらかにあからさまなあけすけなメッセージ性を持って編集している。だけど、使われている映像には新しく撮ったものは何も無く、それまでにアメリカでプロパガンダで使われた映像を並べただけ。編集の仕方次第でいかようにもメッセージ性を表出できるという見本みたいなもんで、マイケル・ムーアの手法もここに倣っているんでしょう。マイケル・ムーアよりもずっとスマートだけど*1メディアリテラシーの教材にもなるかな、と思う。
ところで、これを見に行こうと思ったのは、森美術館六本木クロッシング展にも出ていたヤノベケンジ経由なんだけど、この人、金沢21世紀美術館でもなんかやるんですね。面白そうなので見にいこう。出張のついでに…
この映画、DVDアトミック・カフェ [DVD]が発売されて、マイケル・ムーアが「俺はこれに映画の作り方を教えてもらったぜ」とか言ってるのを前面に出して宣伝しているけど、ムーアには嫌悪感を感じる向きでも絶対面白いと思うから、宣伝の仕方をもうちょっと考えてはどうか。

*1:体型の話ではありません