日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

BankART1929「グローバル・プレイヤーズ」


続いて、日本丸の脇を抜けてBankART1929へ。だんだん酷い雨になり、たどり着く頃にはびしょぬれ。入り口のソファで暫く休憩。
http://www.mercury.sannet.ne.jp/galleryq/deutsche/
今回の企画は、日本におけるドイツの関連企画で、日本とドイツの現代アーティストの競演である。3階で展示されていた、木村太陽の作品が、数も多いんだけど、実に素敵におぞましい。沢山の時計を無理矢理くっつけて、針同士がぶつかり合って進んだり進まなかったりする作品。便器でカレーを食う。下腹部を掃除機で吸われている男性同士が名刺交換。神経のいやなところを刺激する作品が盛り沢山で楽しい。
地下では、ブッシュ大統領が2002年にドイツを訪れた際のフィルムから作られた映像作品。エアフォースワンがベルリンに着陸してから大統領が車に乗るまで。あるいは閲兵式に臨む様子。そして、周囲の膨大な人達。それらを、まるで狙撃手のような視点で淡々と追っていく。作者の意図するところは、世界最高の権力者である大統領と、常に持ち歩く「核のボタン」を仕込んだトランクケースに寓意を込めて…みたいなことなのだが、大統領を取り巻く人達の、イベント準備の様子の記録作品として非常に楽しめた。
それから、歩いてBankART Studio NYKへ。このNYKは元日本郵船の倉庫で、運河に面したところにある。以前は昼間に来たのだが、夜になると横浜の夜景がますます綺麗で、実に素敵なところになる。バーも営業しているので、港を眺めながらのんびりビールを飲むこともでき、これは良い。
さて作品。まず2階。車輪がカギ十字になっている自転車で、だから当然碌に転がらないのだが、それでひたすら坂をでこぼこでこぼこと下っては、歩いて坂の上まで自転車を運んで、また坂道をごろごろ…ということを延々と繰り返す映像作品があんまり馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。
1階では、ユリアン・ローゼフェルドの映像作品が圧巻。33分もあるんだけど、全部見てしまいましたよ。同じ部屋を写し出し、同じ人が存在している二つの映像が同時に左右で上映され、片方は片方のパラレルワールドであるかのように、少しずつ違うことが起き、しかしデジャヴのように一方の出来事がもう一方で繰り返され、ふたつの間であるはずの無い関連性が生まれ、しかし映像はひたすら、同じ家の中だけを写し出して行く。突然、「あるはずのない」映像が唐突に映し出され、一方に注目しているともう一方でこんどは…。中毒性のある作品で、ひたすら魅入ってしまった。これは凄い。銀座の東京画廊でも個展をやってるんだね。明日にでも見に行こうか知らん。
http://www.tokyo-gallery.com/tokyo/index.html
外に出ると、もう7時。港のほうでやっている山崎まさよしのコンサートがかなりの音量で聞こえてくるが、この場所はとても静か。いつも空いているので、ちょっと港の風にあたりながら飲むに素晴らしいところだ、ここは。都会の中のエアポケットみたい。
日本大通りの駅に出て、みなとみらい線東横線を乗り継いで帰宅した。