日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

東京都現代美術館『カルティエ現代美術財団コレクション展』

5時起床。どうも、生活時間が朝型になっているようである。旅行中の記録をまとめて、朝飯食ってだらだら。昼過ぎにお出かけする。
まずは渋谷、代々木で乗り換えて、千駄ヶ谷東京体育館へ。1時間で2.5km泳ぐ。週1回コンスタントに泳いでいると、長く泳いでも疲れが少なくなってきたようで、嬉しい。翌日にもあんまり残らなくなった。
出ると、あれは、トゥドゥンと言うのだろうか、頭に布を巻いた女性が大勢。はて何事やあらん、と思ったが、バトミントンの大会の応援に来た、マレーシアの人たちなのであった。マレーシアはバトミントン強いからね。
さてどこに行こうか、連休中だからどこも混んでいるだろうし…と考えて、モダンアートならさほど混んでいなかろう、と、大江戸線で清澄白河まで出て、東京都現代美術館へ。それなりに人が入ってはいたが、大型連休中とは思えぬ人の入りであった。印象派とかピカソとか北斎とか大観とか、わかりやすいところだと足の踏み場も無くなるところではあるが、さすがにモダンアートは、であるな。
で、『カルティエ現代美術財団コレクション展』である。最初にお断りしておくが、私は美術に関して専門的な教育を受けてもいないし、自分で作品をものせる才覚も無いし、瞠目すべき批評を披瀝できるような知見も持ち合わせていない。その上で。
現代美術というのはほとんどのものが「その人にとってくだらない」ものであり、しかし誰かにとっては「意味のあるもの」であると思う。そして個人としてはその一部の「意味のあるもの」に感銘を受けて、あるいは、「くだらないもの」がなにかのきっかけで「意味のあるもの」になるかもしれない。古典の美術は、それでも全体として「美しく見える」ように作られていたので、満遍なく感心を振りまくをことが表面上可能であった。見て納得したような気分になることができた。しかし、モダンアートにおいてはその「美しい」「わかりやすい」を基盤にしていない。だから、全部が全部、判ったような気になるような必要はない。あなた、まさにあなたにとって、「ほとんどのものはガラクタ」だ。そのガラクタは他の誰かには宝物かもしれないが、あなたにとってはガラクタでよいのである。だから、全部が全部なんとなく判ったような気になって眺める必要は無い。面白くねえものは「面白くねえ」と通り過ぎればよい。一回の展覧会に、1つか2つ、感銘を受ける、心動かされるものがあれば、それでよいのだと思う。そして、そういう、誰かがこころうごかされるかもしれないもの、のために用意された枠組みとしての「現代美術」に存在価値はあると思う。
で、これはあくまでも「一鑑賞者」の立場として、であって、美術批評家がそれを「啓蒙的」に語ることは意味があったとしても、政治的立場の人間が放言したらまずいんじゃないの?とは思うわけですよ。石原慎太郎は知事になったのに相変わらず、政治家の言葉ではなく作家の言葉で語っているところが面白いところではあるし、この展覧会に対する酷評もいろいろ含むところがあるだろうから一概に批判したくないけれど…というか、現代美術と言う枠がある意味権威、というか保護財になっていて、コマーシャリズムとか商業方面のほうがよっぽど凄いものあるよ、的な意見も含んでいるのか知らん…まあ、あんた、来ていただいた立場なんだから、そこでそういうこと言うなよ、とは思った。*1

……あ、まあ、それはともかく。『カルティエ現代美術財団コレクション展』である。であるからして、この展覧会も、やはりわたしにとっては「くだらねーもの」がたくさんあるのであって、それは1鑑賞者としては「くだらねー」とココロの脇に投げてしまえばよいのである。だから、常に感銘を受けた、美しいと思った、興味を惹かれた、心動かされたものについてだけコメントしているのである。って、前置き長すぎるぞ。
企画展示のスペースを全部ぶち抜いた大型展。カルティエ現代美術財団もよくここまで協力したよなあ、という気合の入った企画。やはり一番良かったのは、ウィリアム・ケントリッジの「ステレオスコープ」だろうか。木炭画のアニメーションで、コミュニケーションがテーマのようであるが、アニメーションなのに微妙に残る線がはかなくて、美しくて、印象深い。
アドリアナ・ヴァレジョンの作品。白いタイルで清潔なサウナの画。その横に、白いタイルの真ん中が割れてめくれ上がっている作品。なかから真っ赤な内臓のようなものが…。うわあああ。松井えり菜の絵も結構強烈。まだお若いんですね。ロン・ミシェクの作品、大きすぎて、リアルで、じっと眺めていると、とても怖い。
そのほかにも、いろいろ、興味惹かれるものはありましたです。
常設展のほうは、石井郁の写真…皺だらけの肌の写真と、大岩オスカール幸男が良かった。クリストと川俣正のは、作品と言うか「作品の記録」という感じで、あれって一点ものなのか、それとも同じものを沢山作ってあっちこっちに収めているんだろうか。
ショップも覗いて、最新号のARTiT松井冬子のインタビューが載っていたのだが、モデルさんですかこの人は。大きな写真が沢山。まったくもう、お綺麗な方で。画もとても良いし。
そんなこんなで、半蔵門線から渋谷乗換えで帰宅せり。

*1:ついでに言っておくと、いろんなblogなどから補完した情報で判断するに、石原慎太郎の発言は、TPOを考えなければけっこう納得できる発言であったと思う。いや、まあ、TPO考えなきゃ駄目なんだけどさ