日毎に敵と懶惰に戦う

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ZAIM『ART LAN@ASIA アジアの新★現代美術!!』

さらに歩いて、ZAIMへ。横浜市芸術文化振興財団が運営している施設で、元は関東財務局だったところの1周年記念企画。桃色ゲリラとかやっている増山麗奈がキュレーションをした、日中韓のアーティストを集めた展覧会。
http://www.renaart.com/works/artlanasia/
これがねえ、無料で見せるのは勿体無い!というような濃密な展覧会なのです。見に行かないと損。東京都現代美術館あたりで、企画展としてがっちり開催されてても、まったく遜色ないのです。増山麗奈さんの、作品そのものについては正直、それほど好きじゃないんだけれど、パフォーマンスにかける情熱とか、3カ国のアーティストに声を掛けてこれだけの展覧会を企画する力とかは、もう、実に、驚嘆すべきものなのであり。
全体、メッセージ性の強い作品が多い。表現の仕方としてはストレートなものもあるのだが、極力、声高な主張を排したものが多い。
ジン・キジョンの作品は、まるでCNNやディスカバリーチャンネルナショジオのような映像なんだけれど、裏に廻るとフザケタ模型を映し出しているだけ、という作品。解説の『月面着陸が作りものだった!というユーモアをこめた…』ってのは置くとして、居間にいながらに感じられてしまう『世界』と、自分との距離感の当惑のようなものが、上手く表現されていると思う。
Liu Weiの作品は、スイスの人権団体のドキュメンタリー映画賞を受賞したもので、中国で色々な人々に『6月4日は何の日?』と聞いて廻るもの。この日は天安門事件の日なのだが、当然、みんな、あいまいに答えて逃げようとする。そんななかに、中国の一般庶民の中共政府への意識が垣間見れてとても面白いのだ。すぐにNHKスペシャルで放映しても良さそうな内容。
中国の一般庶民に、生活の(働く)現場で不釣合いなコスプレをさせている写真とか、先日、東京都現代美術館で『新山海経』を披露していたQiu Anxiongのアニメーションとか、切り刻まれたスーツのマネキンが大量に並びぞっとするほど圧倒される孫芙蓉の作品とか。中ザワヒデキとか西澤千春、戸泉恵徳の作品もクオリティ高い。東田理恵子のドローイングも力強くて、部屋全体の構成がとても上手い。全体、空間を上手く使っている展示が多い。
高嶺格の映像も印象深いなあ。在日韓国人二世の女性との結婚という、パーソナルな話題を扱ったものなんだけれど。とても重い内容なんだけれどね、考えさせられた、という意味ではこれがピカイチかも。展示空間の使い方も、これまた上手い。
で、劉小東の作品は、ははは、解説に『日中問題にも発展しかねないスキャンダラスな企画に大慌てなスタッフ』とか書かれていて、まあ日中問題には発展しないだろうけれど、2ちゃんねる周辺の喧しい人に目を付けられたら鉄板で炎上必至、というものなので、詳述は控えましょう。ご自分でご覧ください。クオリティは凄く高い。
増山麗奈とか戸泉恵徳のトークショーも開かれていたみたいだけれど、訪問したときは丁度終わったところだった。増山さん、お子さん連れで、子供がそこらへんを走り回っていた。とにかく、5月13日までですが、日中韓の活きの良いところがぞろぞろ並んでいるので、ご近所の方は是非。ここのカフェも凄く雰囲気の良いカフェなので、あわせてどうぞ。
http://za-im.jp/CONTENTS/archive2006.html
帰るとき、出口付近に人が大勢集まってなにやら突貫工事中で、『八王子郵便局』なんて看板まで置いてある。なんだろう?と思ったら、ドラマのプロポーズ大作戦の撮影で使うらしかった。
帰宅し、大河ドラマを見ながら焼肉の夕飯。今年の大河、風林火山って、久しぶりに時代劇の文法で作られている大河だなあ。