日毎に敵と懶惰に戦う

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発電所美術館、黒部川扇状地を歩く

たまたま入善に出張が入り、これは発電所美術館に行くしかないではないか、という次第。予定より仕事に時間がかかってしまったけれど、仕事が終わって朝の10時半。現地の人に『こんなところでいいんですか?』と訝しがられながら、北陸自動車道、入善のETC専用入口付近で下してもらう。うん、歩いて行ってみよう、ということで

明け方から降り出した大雨が上がり、蒸し暑さにますます湿気が加わった、もわんとした空気。蝉が元気に鳴く、夏の田んぼのなかを、湿気につつまれて、カッと照らす太陽の下を汗をかきながら歩くのは、とても好きだ。匂い、空気。

富山はご存じの通り日本一豊かな県で、田んぼの中に立つ家もなにやら立派だ。防風林に守られて。後ろには高架。高架?

立派に完成しているけれど、何も通っていない高架。なんだろう?としばらく考えて、ああそうか、北陸新幹線の高架だ、と得心がいく。開通はまだ6年後、高架だけ工事は済んでおるのね。田んぼのなかの高架、鉄塔。実は昔からこういうの好きで、決して風景を阻害するものではないと考えていたので、なにか、ドボク好きな血というのは、小さいころから芽生えていたのかもしれない。
さて、このあたりは黒部川扇状地。航空写真を見たが、それはそれは扇状地の教科書のような立派な扇状地で、扇のように広がった広い土地に、ひたすらに田んぼが広がっている。そしてもちろん、扇状地であるから水は豊富で、農業水利の充実ぶりは目を見張る。

どの水路も、滔々たる水を抱えていて、その縦横な水路と、水門の組み合わせが、なんというか、素敵だ。


水路の立体交差もある!

そして、その水を活かしているのは田んぼばかりではなくて

水力発電にも活かされているのですね。扇状地の中の、小さな地形を利用した水力発電所が点在しており、その中にあった『黒部川第二発電所


取り壊される予定だった水力発電所を、そのまま活用したのが発電所美術館なのだすよ
http://www.town.nyuzen.toyama.jp/nizayama/
水力発電所を利用した美術館というからには、もっと山奥にあると思っていたのだ。だけど、こんなひらけた場所にあるのは、独特の地勢のためなのですね


現在開催中なのは、ヤノベケンジの…なのだけれど、何期かに分かれる展示の中間にあたり、公開制作中。しかも、まだ制作がはじまったばかりで、鉄骨の溶接をしてます、というだけだった。これ自体はあまり(笑)。発電所内部をそのまま活かした展示室には発電所の設備も多数残っており、これらを見たり、また、発電所に水が落ちてくる太いパイプをのぞいたりするのが楽しい。過去の展覧会の絵はがきを何枚か買ったけれど、それぞれに、独特の空間をうまく活用していて面白かった。
さて、外に出て、裏手の高台にのぼってみる


高台から発電所へ、落ちてくる水の落差は、わずかに23m。あまり大規模な発電所ではない。高台には展望塔があり、そこからは周囲の扇状地を一望できる



あまり規模の大きい美術館ではないけれど、その独特な雰囲気と展示されているものがマッチしていると、得難い雰囲気になるでしょう。ちょっと今回は残念だったけれど、また機会があったらくるぞ


帰りはタクシーを呼ぶ。バスは一応あるんだけれど、1日2本、しかも奇数日しか運行していない!(笑)。入善の駅まで出て、駅前の寿司屋で刺身定食。それはそれは立派な定食で、きちんとデザートまで出て、さらに正体不明のジュースとお菓子まで出てきた。はらくちくなって、静かな駅前


地方の駅の待合室でぼんやり過ごす時間も、割合、好きです…

金沢行き普通列車の改札がはじまって、中へ。この入善、駅のまわりに大きな工場がいくつかあり、それはやはり、水が豊かだからなんだろうか


やってきた列車に乗って、金沢へと移動するのです