日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

熱海へ自転車で。レトロな『福島屋旅館』に泊まる

6時に起きて、自転車の整備。朝飯を食って、家を出たのは7時半。今日は熱海まで自転車で向かい、一泊して、明日帰って来ようと思う。暑さが心配ではあるけれど、まあなんとかなるでしょう…という楽観が翌日には絶望に変わるのだがこの時点では知る由も無い…。いや、十分予想の範疇だな、うん…
昨年のゴールデンウィーク、自転車で箱根を越えて沼津に行き、修善寺を廻って熱海にも泊まる、2泊3日の旅行をしているのですが
箱根を越えて沼津まで - 日毎に敵と懶惰に戦う
沼津から修善寺、亀石峠を越えて熱海へ - 日毎に敵と懶惰に戦う
熱海から真鶴、そして横浜 - 日毎に敵と懶惰に戦う
この時、熱海でとても気になった『福島屋旅館』というところがあったのですね。今回はそこに泊まろうと思い、前日電話してみたら無事に予約できたので、まあ行くことに決めたわけです。
平戸桜木道路を通り、国道1号線に抜ける。このころにはもう汗だく。戸塚の駅前まで出てきて、踏切が開くのを待っていたけれど、なかなか開かない…。東海道線横須賀線湘南新宿ラインが引っ切り無しに行き来する踏切は、ホームのすぐ隣にあり、8時過ぎに朝のラッシュ時、なかなか開く気配が無い。iPhoneぽちぽちいじってtwitterの返信などをして…開かない!15分くらい経過、こうなるともう意地である…というのが大抵失敗の素で、すぐに決断して迂回ルートを取るべき…なのが普通の話。
ところが。右方向に列車が来るよ、というランプがついたままなのに、突然、警報音が止んで、しかし1秒もしないうちにまた鳴り出した。スッと開いた遮断機が、開ききらないうちに、また閉じ始める。大急ぎで線路の数も沢山ある踏切を、遮断機をくぐる勢いで渡り切った。そして渡りきったところに通りかかった高校生2人が『うけるwww久しぶりに見たこの踏切開くのwww』と言いながら通り過ぎて行った。なんなんだこの踏切は!

駅北側の国道1号が交差する東海道踏切(通称:戸塚大踏切)は「開かずの踏切」として有名である。特に平日の朝は東海道線横須賀線の上下、貨物線を走るライナーと貨物列車で、ほとんど踏切が開く時間がない。
戸塚駅 - Wikipedia

元々は、東京 - 御殿場間の弾丸道路の一部として計画していたが、大磯に邸宅を構えていた当時の首相吉田茂が東京に向かう際に、国道1号東海道本線が交差する戸塚駅の北側にある「戸塚大踏切」の渋滞に業を煮やし建設を指示したという逸話があり、吉田のニックネーム「ワンマン宰相」から「ワンマン道路」という異名をとった。現在でもこの戸塚大踏切は、平日の朝を中心に踏切が開かない開かずの踏切である。
戸塚道路 - Wikipedia

そんな経緯が…。ちなみにこの戸塚道路、自転車では通れないので、自転車で国道1号線を下る場合は、この踏切を通過することになります。午前6時から9時、午後4時から9時は、車両通行止になる踏切。いままで平日の朝ラッシュ時に通過したことが無かったから、真の実力を知らなかったよ…。
さて原宿の交差点まで上り、西へ西へ。藤沢市街方面への分岐を過ぎると藤沢バイパス。正直、戸塚道路が自転車通行禁止で、藤沢バイパスが自転車通行可能なのは不思議…という高規格さで、下り勾配とも相まって風除け無しに簡単に50km/h以上…げふげふ。新湘南バイパスの分岐を過ぎて、茅ヶ崎、平塚、大磯、二宮…のあたりは40km/h制限の少し狭い道だけれど、松並木が点在していたり、神社が多かったり、古の東海道の雰囲気を少し味わえる。ソルティ・ライチは確かに美味いけど、暑い日に自転車に乗りながら飲むには、甘過ぎるな…
汗だくで二宮のサンクスで休憩、アイスと水を補給。道路沿いにコンビニが点在しているのはありがたいことでヤンすね…。さてもうひと頑張り、行政区界的には小田原市に入り、国府津を過ぎて酒匂川を渡り、小田原の宿場にある無料休憩所に到着したのは11時過ぎ、ここまでで53km、まずまず順調なところ

冷たい水も用意されていて、火照った体には誠にありがたいですね…。
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/business/industry/urban/nariwai.html
と、ここに入ってきたおじさん。入ってきた当初から何事か喋りながら入ってきて、ああ、いますよね、話好きな人なんだな、と思い、ちょっと話を振られたので合わせていたけれど、どうも普通の話好きとは違う、喋ってないと死んじゃう病気なのかな、という勢いで喋る喋る。自転車で来てます、というと、自分は自転車歴40年でどうのこうの…とこれまた、たて板に水で滔々と気持ちよさそうに語る語る…。ちょっとおかしいのと違うか。普通なら適当に切り上げて席を立ちたいところだけれど、こっちも疲れておるでなあ。こういうおっさんには、途中まで話を合わせて頷いておき、めんどくさくなった時点でそれは知らないです―、と若者らしさを演出するのが、面倒を起こさずに気持ち良く喋らせて馬耳東風体制に入るコツじゃよ…
昼飯の話になって『小田原どん』というのは知らないです―、と言ったら、ここが美味いよ云々滔々ベラベラ、と店を教えてくれたので、これ幸い、じゃあさっそく行ってみますね!きらきら!ありがとう!という感じで離脱。話聞く限りでは味覚はそれなりに信用できそうな人だったので、一応、行ってみました

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開店5分前で、並んでいる人が1人。中に入ると、そこはかと無いロハス臭というか、店内のいろんなところからカッコ付き“女性が喜びそうな” 系の兆候が感じられえ、若干危惧したものの。

ふおお、なんかすごい。鯵フライが山のようになっている、鯵サクサク丼、確かに鯵がサクサクで、これは美味い。大きな玉麩が入ったお吸い物も美味しい。満足。夜も良さげな店でありました。おっさんには感謝せんとな。で、その足で先ほどの休憩所に戻ってきたら、おばちゃんに『ご飯食べて来たの?義理だてしなくてもいいのにー』と言われた(笑)いやまあ、美味しかったから良かったんですけどね『さっきの人、隣のラーメン屋に行って、開店まで追い出されたってブツブツ言い通しで戻ってきたわよ。いろんな客がいるだろうに接客がなってないとか、言っていたけど、あの人が一番…』『立板に水で凄かったわねえ、ターゲットにされちゃって可哀想になあ、と思って』言いたい放題でござるな(笑)
さて、食後の休憩も済ませて、あと25km頑張りましょう。国道1号線から分岐して、石橋の料金所

早川あたりの海沿いを気持ちよく、走る。そして、国道135号線と県道740号線の分岐点

詳しくは以前の旅行記をご参照いただきたいんだけれど、真鶴からここまでの国道135号線はかなり怖い思いをしたので、ここから山側を通る県道に入ろうかな…とも思っていたのだけれど。まあ、平日だしそれほど車も多くないし、慎重に走れば大丈夫かな、と海沿いの道を直進してみた。実際これは正解で、お邪魔ですねお先にどうぞの精神を発揮しながら20km/hくらいで車道の端を堂々と走れば、あまり危なくないことを実感した。県道740号線を行くより景色は良いし、早かろうし、良かったです。日陰がぜんぜん無いのは辛いけどね

で、真鶴駅には13時20分ごろに到着。さてどうしよう。このままだとあと30分くらいで熱海に着くけれど、そんな時間から温泉宿に行くわけにもいかないし…といろいろ考えて、まだ行ったことの無いMOA美術館に行くことに。行くことに…しかし、もう少し考えればよかった…
車用の案内看板に素直に従って、伊豆山の交差点で右折、MOA美術館まであと2.5kmの道のり。いきなり上り坂となり、ははは、これはきついねえ、などと余裕をかましておれたのも少しの間。これはきついねえ、という坂道が何時まで続くのか!ずっとノボリではないか…。ちょうど日差しも絶好調、気温も絶好調の中を、少しでも日陰を求めながら、自転車を押していきます…。ようやくMOA美術館に着いた時には、汗でわけがわからんほどにぐちゃぐちゃになっておりました。

1600円とちょっとお高い入館料を払って中に入ると、おおこれは、素晴らしき眺め

それもそのはずで、ここの標高、260mくらいあるんやて…。そりゃあ、ノボリもキツイはずだわ…

MOA美術館 | MOA MUSEUM OF ART | MOA MUSEUM OF ART
展示物のほうは、仁清も、乾山も、仏像もそれぞれに素晴らしく、モネの2点、レンブラントの自画像、これまた、いずれも良いものをお持ちなんですなあ。企画展の徳田八十吉の美しい発色の焼き物を含め、良いものが沢山見られました。熱海観光だと定番の場所だろうけれど、実ははじめてだったのですね…。景色も良いし、来て良かった。庭園に出て



やー、さすが、凄いわねえ、宗教団体は
世界救世教 - Wikipedia
MIHOミュージアム思い出すね
MIHOミュージアム『中国・山東省の仏像−飛鳥仏の面影』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
芝生に寝転がってしばらく休憩して、さて、4時半、もういい時間だ。熱海の街に下りましょう。ちなみに、大型バスなんかだともっと標高の低い地点に入り口があり、そこから長い長いエスカレータを通って入場できるんやて…。そっちから行けば良かった…。急な坂道を下って

このあたり、熱海の山の上は桃山町というのかな。景色が良くて、お金持ちの家、別荘、企業の研修所なんかが凄く多いのね

さて、そして、熱海の街に降りて、本日のお宿『福島屋旅館』どーん


熱海の繁華街に近く、一等地にあるんだけれど、webページはありませんし、楽天トラベルとかにも出てません。口コミが散見されるのみ。前回、熱海に来た時に通りがかり、ああ、こりゃ良さそうだと

沼津から修善寺、亀石峠を越えて熱海へ - 日毎に敵と懶惰に戦う
思って来たみたら、大正解だったという。まず帳場からして雰囲気満点


日帰りの入浴が出来るようになっており、400円で入れるのですな

客室は2階に。階段を上って


廊下も雰囲気があるのう…


旅館の歴史は古く、明治の中ごろからだそうで。建物はさすがにそれほど古くはないよね…?でも年季の入り具合は半端ない


客室、当然、風呂トイレなし。鍵もありませんよ。ですが、通りに面した気持ちの良いお部屋



さて、風呂もまた素晴らしいんだ。源泉掛け流し、板敷きの脱衣場

大きめの浴槽で、深さがけっこうあり、熱めのお湯

ざんぶとつかって疲れと汗を流し、扇風機に吹かれてぼんやり…ああ、幸せ…

こういう、流しのタイルにもぐっときますね…

翌朝には、鯵の干物がちゃんとついた、しっかりした朝飯をお部屋まで運んでくれて(干物も味噌汁も暖かかったよ!)

1泊朝食付きで5650円というのだからあなた、熱海も捨てたもんじゃない、というか度々来たいぞ、と思うのでありました。さて、風呂にからあがり、部屋で涼んでいても、なかなか汗が引かない。しかし、まあ。飯食いに行こう、腹減ったなあ、ビール美味いだろうなあ、こういう時、明らかに生ビールが当たりの店以外は瓶に限るんだ…などと考えながら、熱海の通りに面した旅館の二階のレトロな部屋で一人ぼんやり、涼んでいる幸せ感ったらないね。
部屋を出て、海のほうに少し散歩して夕涼み


さて、どうしよう。糸川沿いに、若干軽薄な店構えだけどビール安いし、アサヒじゃなくてキリンだし、つまみも手頃で、観光客じゃなく地元の人向けに若い人が頑張ってるんだろうなあ、という店があったので一軒目はそこで…と入ってみたら、店内の席がすべて『予約』で埋まっており、おばちゃん一人に迎えられ、ちょっと予想と違ったか。
だけれど、生ビールは美味かったし、突き出しが悪くない時点で、ああ、こりゃ大丈夫だな、と。鯵の刺身と焼鳥も美味かったし、日本酒、寒河江の澤正宗というのをいただいて、これもあっさりしていて美味かった。お店を一人で切り盛りしている、ちょっと艶っぽいおばちゃんの人生に思いを馳せたくなることは必定で、予約席のプレートが溢れているのに客がくる気配が無いことが大変気になるし、時々かかってくる電話の内容をちらと聞いていると、このへん一帯を牛耳ってる女衒、やり手婆の類かもしれん…などと思ったりもしますが、まあ、まあ。明朗会計で結構でございました。
川の欄干に頭をすり付けながら立ち小便に興じるおっさん、ソープランドの店先で熱心に足の爪を切るおっさんなどを横目に、海岸で少し酔いざまし…のつもりが結構な時間が経っており。今日明日と出ている屋台を眺めて、コンビニで買った牛乳500mlをその場でごくごく、宿に戻ってもう一度風呂に入り、共同の冷蔵庫

に突っ込んでおいたビールを取り出してだらだらと飲んでいると、熱海の夜はふけるのでありました…