日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

東京都現代美術館『トーマス・デマンド』と、綱島温泉

日曜日、昨夜は結構飲んだけれど、まあ体調は良いのであります。11時前に家を出て、電車を乗り継いで清澄白河へ。東京都現代美術館で『トーマス・デマンド』
展覧会|東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO
トーマス・デマンドはドイツのアーティストで、写真などをもとに紙の工作で原寸大で再現した場面を写真に撮り、模型のほうは壊してしまう、という作品を作っている。その写真と、映像作品からなり、それほど作品数は多くない。さっと見て行くと、30分とかからず出てくる。そう、1週目は。へー、すごいねー、精巧だねー、とぼんやり通り過ぎる。
さて2週目だ。詳しい作品解説が1週目の最後に置いてあり、というか、作品解説がある、ということ自体、この時点で気が付くことになる。作品の一覧は入口で貰えるんだけどね。で、作品解説をちらちら見ながら(この作品解説とて、ごくごく簡単なもので、何かを読み取ることを迫ったりはしない)2週目を見て行く。こういう解説の準備のされ方は、同じ美術館で以前にありましたね
東京都現代美術館『名和晃平-シンセンス』『MOTコレクション、石田尚志』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
2週目が終わることには、3週目を見始めていることに気が付く。ぐるぐる廻っているうちに、いろんな考えが頭をもたげてくるのだ。
再現されている場面は、多くの人が見たことがある場所だ。たとえば有名な事件現場、たとえば大統領執務室、たとえば有名な観光絵葉書、たとえば福島第一原子力発電所の制御室の、地震後、はじめて電源が復旧した時の写真。そう、これね
東京電力 写真・動画集| 福島第一原子力発電所1号機中央制御室
私たちがよく知っている場面、それが精密に再現されていることにまず驚くのだが、それが紙で再現されていることをよくよく考えて行くと、これはどこまで再現されているのか?この質感は紙をどうやって作っているのか?箱は再現されているがその中身はどこまで再現されているのか…?そう、表面だけ、再現されているはずのもの。だがしかし。その、私たちがよく知っている場面、写真、それのことを、わたしたちはどこまで本当に知っているのだろうか?その目に見える表面以外、大統領執務室のことを知っているのか?そもそも、写真に撮られたそれ、は、その瞬間は本当に存在したのだろうか?なぜ私たちは、それが、まさに、あった、と確信できるのだろうか?
あるいは、たとえば、NASAの月面環境実験室。あるいは、自動車の開発のための無響室。何かをシミュレートするための場所。コピー機が大量に並んだ風景。それを紙で再現することで、そのもともとの役割はまったく果たせない紙なのに、写真に撮るとあたかもそこに意味を持って実在しているかのようになる。何かをシミュレートしたり、コピーしたり、そのもののの正しい働きとしての嘘と、紙で再現されたことによる嘘。嘘であることはどの程度に等価で、あるいは異なるのか?
そんなことを考えながら、考えはまとまらず、混乱のまま、会場を出てくるのだった。常設展も見ごたえがあるので、ご一緒に。
美術館を出て、電車を乗り継いで綱島へ。かの綱島温泉東京園の2階の一室を借りて、オヤジが古い友人と宴会をやっているというのでちょっとお邪魔。民謡相撲甚句戦時歌謡の大合唱、まさにどんちゃん騒ぎとなりまして、おとなりの反原発勉強会からやんわり苦情を言われるような事態でございまして、大変楽しゅうござました。

1階の大広間には、今日もゆったりした時間が流れておりました

以前に書いた記事
今週末のタモリ倶楽部は綱島温泉への旅。そして東京園は一度は訪れるべきヴァルハラである - 日毎に敵と懶惰に戦う
帰宅途中、福富町のおがわでどら焼きを買い…いや、あっさり買い、などと書いていますが、とにかく耳の遠い老夫妻がやっているので、簡単には出てこない。

何回も叫んでも出てこないので、家の中に踏み込もうかしら…と思ったら、すぐそこの茶の間にちょこねんと座っておられたのでありました。びっくりした。ま、そんなわけで無事にどら焼きを買って帰宅。どら焼きは、しっかりした甘みとどっしりした皮の、大変おいしいものでございました
恰幅の良い彼のblog  -  謎の寂び店 福富町「おがわ」のどら焼
在華坊(@zaikabou)/2012年06月03日 - Twilog