日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

『GQ』的価値観を生きる

終演後、いつまでも降り続く冷たい雨の中を明治通りまで歩いて、イタリアンの『マンジャ・ペッシェ』へ。10年以上前からあるお店らし。シェフのおすすめコースというのにして、前菜が2品、パスタ1品、メインの魚料理はイトヨリを野菜とアサリと蒸したもの。デザートにパイナップルのタルト。前菜のモッツァレラチーズ、国産のものなのだが適度な酸味があって大変美味しく、そのほか野菜も自家製のパスタも美味しかったし、お会計もそれなりだったし、サービスも良かったし、しかし魚料理が売りの店ではあるが実はメインが、良いのだけれどもイマイチであって、どうも前菜など、それもそれぞれ個性の強い前菜に光るものがある店なのかしらん、と思ったが、料理と店自体には満足したのである。が、となりの人である。
とにかくよく喋るので嫌でも会話が耳に入ってくるのだが、年齢は30くらい、女性のほうはSFCを出てコンサルで働いている人、男のほう…アスキーの西さんをスマートにしたような印象…は会社の同僚か。恋人同士ではない。
で、とにかく女性のほうがよく喋る喋る喋る、海外旅行の話、仕事の話、時計の話、んで、聴けば聴くほど、一言で言ってしまえば『GQ』的価値観を地でいって生活している人のようなのである。時計の話なんか、時計が人となりまで規定する、みたいな、お前どこのモノマガジン?みたいな事言っているし。「デザインが良くてもタグホイヤーってロゴが入っているだけでイヤ」とか「フランクミューラーがどうのこうの…」なんて延々。
レストランの話でもロオジエがどうした、とか、あそこに行ったここに行った、みたいな話を延々。
仕事の話も、具体的な事例の話はまったくなく(ま、公衆の面前で具体案件の話はできないだろうが)、うわっつらな「イメージの中のコンサル」みたいな話ばかりしていて、本当にコンサルの人?とか思った。BCGがどーしたとかマッキンゼーとか延々喋っていて、要するにブランドが好きな人なんだろうか。「私たちみたいな凡人にはコンサルでいつまでもやっていくのは無理よねー、早く楽したーい」なんていいながら、自意識はあくまでも「私は凡人」などとは思っていないのがアリアリと伺えるのであった。
全般的になんちゃってロジカルシンキング
で、男のほうは、「なーるほどねー」「そーうだねー」と、まったく気の無い返事を延々していて、そばに寄っていって肩を叩いて「大変だね」と言いたくなったのであった。
いや、ワタクシ、『GQ』というのは作っているほうも読んでいるほうもみんな、一種の洒落なんだとばっかり思っていたんだけれど、実際にああいう価値観の中で暮らしている人がいるのだ、私の視界などには入らないようなところに沢山いるのだ、と驚愕した一夜であった。これもまた、消費フェミニズムというやつなのだろうか。三浦展なら称揚してくれそうだ。三浦展に称揚されても嬉しく無いだろうが。