日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

まずはイサム・ノグチ展へ

6時に起きて、家を出たのは10時過ぎ。東横線から日比谷線、東西線に乗り継いで木場駅。てくてくと歩いて(木場公園は大きいネ)東京都現代美術館へ。イサム・ノグチ展である。
東京都現代美術館に来たのは何年ぶりだろう。5年くらいか?相変わらず無駄に立派で大きな建物で、現代美術になんでこれほどの大きくて面白みに欠ける建物が必要なんだろう…とは思うが、まあしかし、作っちゃったもんはしょうがないね。
常設展と合わせて1300円払って中へ。今回は彫刻ばかりで、心の琴線に触れたのは、エナジー・ヴォイドをはじめとした花崗岩の作品群。綺麗に磨かれた部分と自然の風雨に穿たれたような部分からなる表面の手触り…いや、もちろん触っちゃいけなんだが、触りたいなあ、と思うような表面。それから、赤い「山」という作品。ちんまりした盆栽のような大きさで、しかし表面の色になんだか不安な気分を掻き立てられた。モエレ沼公園の模型もあったですよ。

常設展も。この常設展が実に見応えがあって、しかしとにかく、不安というかなんというか、安定から遠いところへ、心を乱されるような作品。日常の風景が日常の風景で無くなっていくような不安。例えば、高熱を発すると自宅の天井が怪しいものに見えたり、夢に「普通に見えるけれども普通じゃないもの」を発見して気持ちが悪くなったりすることがある。ああいう感覚を呼び起こされるような作品がたくさんあった。小沢剛の地蔵建立とか、横尾忠則の作品とか、思わぬものも見れて満足した。

昨日のリベンジでドイツのビール

清澄白河まで歩いて、大江戸線で赤羽橋へ。霊友会の脇を抜けてフランツィスカーナーの神谷町店。昨日、日比谷公園でSPATENを飲み損ねたので、しかし1度飲もうと思ったものが飲めないのはストレスが溜まるので、昼からビール。店内にはドイツ人が三人、カウンターで飲んでいて、相変わらず外国人の割合が多い店である。
今日は、フランクフルト(ザワークラウトとレンズ豆の煮たのがついてくる)、ハッシュドポテトの生ハム添えを頼んで、SPATENのオクトーバーフェストビールを二杯。やっぱり美味い…。食い物も美味い。
その後、日比谷線で恵比寿、湘南新宿ラインに乗り換えて横浜、京浜東北線桜木町に出る。

横浜美術館「李禹煥 余白の芸術」

横浜美術館へ。今度は「李禹煥 余白の芸術」展であるが…。うーん、ごめん、これはパス。色々見てみようと思って来ては見たものの、やっぱり私、余白系の作品は苦手かもしれない。というか、いろいろ試行錯誤の末の到達点だけ見せられて困惑したというか…。
それから、こっちも常設展を。ここは写真撮影が可能なんですね。

BankART1929「グローバル・プレイヤーズ」


続いて、日本丸の脇を抜けてBankART1929へ。だんだん酷い雨になり、たどり着く頃にはびしょぬれ。入り口のソファで暫く休憩。
http://www.mercury.sannet.ne.jp/galleryq/deutsche/
今回の企画は、日本におけるドイツの関連企画で、日本とドイツの現代アーティストの競演である。3階で展示されていた、木村太陽の作品が、数も多いんだけど、実に素敵におぞましい。沢山の時計を無理矢理くっつけて、針同士がぶつかり合って進んだり進まなかったりする作品。便器でカレーを食う。下腹部を掃除機で吸われている男性同士が名刺交換。神経のいやなところを刺激する作品が盛り沢山で楽しい。
地下では、ブッシュ大統領が2002年にドイツを訪れた際のフィルムから作られた映像作品。エアフォースワンがベルリンに着陸してから大統領が車に乗るまで。あるいは閲兵式に臨む様子。そして、周囲の膨大な人達。それらを、まるで狙撃手のような視点で淡々と追っていく。作者の意図するところは、世界最高の権力者である大統領と、常に持ち歩く「核のボタン」を仕込んだトランクケースに寓意を込めて…みたいなことなのだが、大統領を取り巻く人達の、イベント準備の様子の記録作品として非常に楽しめた。
それから、歩いてBankART Studio NYKへ。このNYKは元日本郵船の倉庫で、運河に面したところにある。以前は昼間に来たのだが、夜になると横浜の夜景がますます綺麗で、実に素敵なところになる。バーも営業しているので、港を眺めながらのんびりビールを飲むこともでき、これは良い。
さて作品。まず2階。車輪がカギ十字になっている自転車で、だから当然碌に転がらないのだが、それでひたすら坂をでこぼこでこぼこと下っては、歩いて坂の上まで自転車を運んで、また坂道をごろごろ…ということを延々と繰り返す映像作品があんまり馬鹿馬鹿しくて素晴らしい。
1階では、ユリアン・ローゼフェルドの映像作品が圧巻。33分もあるんだけど、全部見てしまいましたよ。同じ部屋を写し出し、同じ人が存在している二つの映像が同時に左右で上映され、片方は片方のパラレルワールドであるかのように、少しずつ違うことが起き、しかしデジャヴのように一方の出来事がもう一方で繰り返され、ふたつの間であるはずの無い関連性が生まれ、しかし映像はひたすら、同じ家の中だけを写し出して行く。突然、「あるはずのない」映像が唐突に映し出され、一方に注目しているともう一方でこんどは…。中毒性のある作品で、ひたすら魅入ってしまった。これは凄い。銀座の東京画廊でも個展をやってるんだね。明日にでも見に行こうか知らん。
http://www.tokyo-gallery.com/tokyo/index.html
外に出ると、もう7時。港のほうでやっている山崎まさよしのコンサートがかなりの音量で聞こえてくるが、この場所はとても静か。いつも空いているので、ちょっと港の風にあたりながら飲むに素晴らしいところだ、ここは。都会の中のエアポケットみたい。
日本大通りの駅に出て、みなとみらい線東横線を乗り継いで帰宅した。