日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

能登の郷土史家の方のblog

http://d.hatena.ne.jp/umiyamabusi/
今日、いろいろ検索していて見つけたサイト。能登在住の民俗学の研究家?の方のblog。能登半島はそれこそ、民俗学周辺の好きな人には宝の山のようなところなので、日々の写真、習俗の紹介、その他、「郷土史家とその周辺のいろいろの日常」的なものが垣間見えて大変面白し。昔から、ちょっと憧れてるんですよね、地方の郷土史家って。
去年の5月に、能登に旅した。
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20040518
唐沢俊一が、食事が感動的だと賞賛していた民宿「さんなみ」に行くのが主目的だった。現地では、能登の郷土食の魅力を存分に堪能したのは勿論の事、そぞろ歩く町並みの、海からの風に耐えてきた家々が並ぶ様に、なにか言い様の無い感動を覚えたのも記憶に新しい。のと鉄道の穴水以遠廃線前に訪れることができたのも幸運だった。
能登空港まで羽田から一時間。能登空港から「ふるさとタクシー」に乗れば、能登半島のどこにでも安価に運んでくれるので、週末に、東京からのショートトリップはいかがですか、と宣伝してみる。また行きたいなあ。

早稲田大学でビラ撒いた人が逮捕された件

撒いていたほうの主張
http://wasedadetaiho.web.fc2.com/
大学側(文学部)の主張
http://www.littera.waseda.ac.jp/littera/PDF/20060110.pdf

私を含め、最近大学に在籍していた人、現に在籍している人は、ビラ撒いているのがどういう連中か感覚的に分かっているので、ビラ撒き側を擁護したり、逮捕されて可愛そう、という感情はまったくない。というか、本当に邪魔。さっさといなくなれ。手前らの権利だけ守りたいだけだろ馬鹿、と思っている。
だけど、では今回の逮捕が正しいか、もろ手を挙げて賛成できるかと言えばそれも「うーん」であり、明らかに大学側、やりすぎでしょう。もうちょっと穏当にやってよ、という思い。だけど、この人たちの活動に署名をする気には毛頭なれない。捨てるには大きすぎる小異が深い川のように横たわっている。
ビラ、ちらし、立看板で混沌とした構内が見事に浄化されていく様を見て、なんでそこまで極端にやるんだろうな、と寂しく思っている事実。ま、単なるノスタルジーであって、今在籍している人は、そういう思いは無いのかもしれない。
その「懐かしむ」私の心情にしても、それが許された、もしくはそれを勝ち取った環境において何かを成し得たわけではなく、ただ「成し得る環境に自身が身を置いていた」ことを、わが身の詰まらぬプライドの一部として、生きているだけなのかもしれない。
その、自分は何もしなかったけれども安住していた場所が、どうも解体されているらしい。いったい、誰に責任をおっかぶせるのか。
いかにも混沌、いかにもカオス「のように見える」大学環境は、大学当局側と適度に仲良くするなかで維持できるものではなくて、無闇に騒いでいて普通の学生の利害とはまったく無縁であった「あの連中」が、勢力を弱めながらも活動していたおかげで、その間に保たれていた絶妙なバランスによって支えられた「パラダイス」だったのかもしれない。闘争史観のおこぼれとしてのぬるま湯の自由。
私は良く、「極端な活動家が結局は大学自治を後退させている」的な論を振り回すことがあった。だが、それ、その自治や自由は元々、その「極端な活動家」が勝ち取ったもので、「そのころ」であったなら、私たちはそれを支持していたのだろう。そして、その活動家たちが時代に取り残され、自滅の道を進んでいくのを見ながら、何もしない身で「あんたらのせいで…」というのはお門違いなのかもしれない、と思う。まあお疲れさん、さっさと退場しなさいね、と肩を叩く位がせいぜいなのか。

今回の件に関して言えば、大学は明らかにやりすぎだが、活動家に賛同するつもりも、まったく無い。だけど、結局、普段は当たり前だと思っていた「大学の自治」なんてご大層なものは、あの活動家のようにやらないと、本当は維持できなかったものなのかもしれない。第三の道なんてかっこいいものは、本当は無いのかもしれない。

この項、以前に書いた内容とちょっと関連しています。
d:id:zaikabou:20051031#1130741422
d:id:zaikabou:20051101#1130824548

(追記)
「だめ人」さんからコメントをいただき、それへの返答という形で続きを書きました
d:id:zaikabou:20060123#1138022624

恵比寿の写真美術館へ

朝から家でのんびりして、体を休める。やはり、休日の出かけすぎも体に負担だったようだ。昼飯に朝はパン、昼にカップやきそば。午後もゆるゆる。
3時ごろ、ちょっと腰を上げて、東横線に乗り込む。渋谷は人が多くて疲れるので、恵比寿へ。ガーデンプレイスに向かう途中、看板広告のイ某氏だかペ某氏だかを写メールで激写して、キャワキャワ騒いでいるおばちゃん集団に驚く。なにやってるの。
恵比寿ガーデンプレイス、久しぶりの東京都写真美術館ベトナム岡本太郎植田正治をやっていたが、植田正治だけチケット購入、500円。やさしい写真が、見たかったのです。それにしても、3つとも見るとセット券でも1950円は、ちょっと高いね。
植田正治の写真はとても静かだ。静物や、ノイズが少ない風景の写真などが静かなのは勿論なのだが、人物の写真でも静か。音が聞こえてこないような写真が多い。
そして、モダンでスタイリッシュ。あんまり深く考えずに「カッコいい」「部屋に飾って置きたい」と、一目見て思わせるような写真が多い。写真集で見たいというよりも、部屋に飾って、じっくり、静かに、向かい合っていたいような写真なのだ。同時に、ちゃんと写真を撮りたいなあ、と思わせるような作品が多かった。撮っている人が楽しそうなのですよね。立ち止まってほーっと眺める写真が多く、なかなか楽しめた。
美術館を出て、麦酒記念館に寄っておいしい生ビールを飲もうかな、とも思ったけれど、うろうろせずにさっさと帰宅。栃東が優勝するところを見ることが出来た。

輪舞曲 ロンド と言うドラマを何気なく見ていたわけだが…

553 :渡る世間は名無しばかり :2006/01/22(日) 21:38:34.05 id:ZRl0Mndj
このドラマの作り手、絶対自分達の作る映像に酔ってるよね

ストーリーはよく分からんけど、やたらと派手な音楽、スローモーションのシツコサ、大げさな演技、スケールだけ大きな物語。作りまで韓国韓国しなくてもいいと思う。というか、ハードボイルドやろうとして大失敗している昔の台湾映画、というか。そういう感じ。

対照的な二つの湯治場

テレビ東京の湯治場特集、後生掛温泉が出るらしいので、録画して飛ばし飛ばし見る。数年前のゴールデンウィーク、東北の温泉めぐりと題して、一人で尋ねた秋田の後生掛温泉、岩手の鉛温泉はいずれも衝撃的だった。
後生掛温泉は山の中の一軒家で、オンドル式の大部屋で自炊しながら湯治する客がたくさんいるのだが、この大部屋が言うなればフェリーの2等、タコ部屋みたいな雰囲気。そこに死にそうな年寄りが一日中枕を並べている凄い光景を目の当たりにし、さすがに大部屋は…と選んだオンドルの小部屋も振るっていた。まんず、3畳あるかないかの質素…いや、質素は褒め言葉だ、板張りの、俺は屯田兵か、みたいな部屋に通される(通されはせず、一人で通ったのだが)。
到着したのが昼過ぎ。とりあえず風呂に入って戻ってみたものの、娯楽施設など何も無く、山の中の一軒宿なので歩いてもどこにもたどり着かないような場所。一通り宿を観察した後は、部屋で寝ているしかない。しかし、狭い部屋にオンドルの熱気が充満していて、熱い。とても暑い。拷問のようだ。こんなところまで遊びにきて、私は何をしているのだ。
で、寝ているのがあけれに飽きれば風呂へ、風呂に飽きれば部屋で寝る、という怠惰な一泊を過ごしたのであった。しかしとにかく、お湯はわが人生で最良の質であったし、あんな湯治場らしい雰囲気はまったく得がたいものであった。素晴らしい、また行きたいところだ。
なお、三井理峯先生がおっしゃるような「凄い暴力団」はいなかったことは、念のため申し添えておきたい…と言っても誰もわからんネタですが。
そんな後生掛温泉が紹介されるというので、録画してテレビで見た。そこには、農閑期を気の置けない仲間と楽しむ、元気な東北のお年寄り達が写されていた。自炊して、お風呂に入って、大部屋でおしゃべりやら音楽やら思いのままに過ごす。「小原庄助さんみたいだね」とニコニコと過ごすお年寄り、しかもみんな色艶が物凄くいいのだが…そんなお年寄りを見て、改めて後生掛、素晴らしい所と再認識したのでした。
そして、次に出てきたのが、山一つ挟んだ玉川温泉。ここは娯楽の湯治場ではなかった。治療の場所、修行の場所だ。日本一の効能と霊験あらたかな玉川温泉に、東京から藁をもすがるような思いでやってくる湯治客たち。その多くが癌患者。ここが発祥の岩盤浴を行うためには、雪深い既設、宿から大変な思いをして、源泉にたどり着かないといけない。雪の中に張られたテントの中、順番待ちまでして、修行のように岩盤浴にいそしむ女性。「肺がんだからガスが充満しているのはよくなくて…」と、雪が降る中、わざわざ表で岩盤浴する男性。もはや「信仰」とでも言ったほうが良いようなストイックな光景が繰り広げられている。まさに修行だ。
すぐそばの、泉質効能は異なるものの、いずれも効果抜群の湯治場。その二つのあまりに対照的な性格、実に興味深かった。