日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

恵比寿でおたくを見ること

8時過ぎに起きて、昨日のカレーを食う。相変わらず翌日のカレーは美味しいのだが、では前日から作っておけば良いではないか、という意見には「まった」と言いたい。前日も食べるからこその「翌日のカレー」であって、前日から煮込んで翌日食べるカレーは、「良く煮込んだカレー」ではあっても「翌日のカレー」ではない。だから「美味しい翌日のカレー」ではない。
11時過ぎに外出。寒い。とにかく寒い。もう、引き返して布団被ろうかというくらい寒い。しかし、綱島から東横線で中目黒、日比谷線で恵比寿へ。東京都写真美術館
グローバルメディア2005 おたく:人格=空間=都市
を見るため。昨秋の、建築のヴェネチア・ビエンナーレの、日本館の凱旋帰国展である。
チケット売り場で「これください」と指差して300円也のチケットを購入すると、受付のおねーさんが「はい、おたく展ですね」と笑顔でチケットを渡してくれる。いや、間違っちゃいないけどさ*1、ちょっと、どうなのよそれは。エロ本を女性店員から買う感覚。
地下に下りて入り口入ると、いきなりのキモヲタAAで、多分、部外者ドン引き。大阪万博の写真パネル、海洋堂のフィギア、「侘」「寂」「萌え」「ぷに」の各国語解説、新横浜ありなのフィギア、エロゲーのポスター、オタクの個室写真と再現(部屋のジオラマの中では、フリクリを無限ループで上映中)、レンタルショーケース沢山、同人誌、コミケの俯瞰図、ネットゲームの紹介、秋葉原の街の模型。音楽は、「Komm,susser Tod 甘き死よ、来たれ」と、もう一曲を無限ループ。照明も微妙に薄暗いし、客層も秋葉原で見なれた方々が多いし、もうお腹一杯。
だけど、なんか微妙、というか「うーん」という思いが。これがヴェネチアという土地で、多くの異人さんの目に触れた、と考えると、やはり感慨がある。例えば私自身、ヴェネチアに遊びに行ってこれを見たとしたら、もっと感慨深いものがあっただろう。しかし、ここは日本の東京の恵比寿。日本で見る限りでは、いつも秋葉原で見慣れたものをまた見ている、という感覚しかないし、客筋も、恵比寿らしい感じがしない。恵比寿の客筋に異文化体験をさせるという役割も担えそうに無い。森美術館が、展望台に来る人間にも美術を無理やり見せてしまった、というようなサプライズも無いわけである。
だから、これはやはり「凱旋帰国展」として、(自分も含めた)おたく達が「これがヴェネチアの空の下で……」と妄想を逞しくして、ハァハァしたりモニョったり怒ったりする、というのが正しい受け止め方なのかもしれない。日本にいる限りでは、秋葉原に実際に行ってみたほうが、遥かに物凄いものがいつでも簡単に見れるのだから。見に行っても命取られたりしないし。
さて。写真美術館のバッジをつけているけど、客側と通じ合う空気の人がいるな、と思ってよくよく顔を見たら森川嘉一郎コミッショナー様ではありませんか。森川先生、客と馴染み過ぎだよ…。森川先生は展示を一通りチェックして引き上げていった。実は私、去年の冬コミでも森川先生を見かけたのだが、やっぱり参加者に馴染みまくりだった。
なお、展示そのものとしては、森川嘉一郎の「趣都の誕生 萌える都市アキハバラ」の内容、主張をそのまま視覚化している、と考えると良い。構成はスッキリしているし、よく出来ていると思う。

*1:実は展示会の正式名称に「おたく展」なんて一言も無いのだから、そもそも間違ってるのだ