日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

東京都現代美術館『川俣正 通路』

9時起床。さすがに良く寝た。洗濯機を2回廻して、10時半には家を出る。東海道線が線路立ち往生だかなんだかで遅れていたので、京急から乗り継いで清澄白河、東京都現代美術館。今日のお目当ては、川俣正の展覧会。
川俣正といえば、2005年の横浜トリエンナーレを奇跡的に形にしちゃった人、という印象が私の中では強いのだけれど、とにかく、ワークインプログレスちゅうんですか、仮構築物みたいな作品をあっちこっちに一時的に作っている世界的に有名な人。で、今回の展覧会は、とにかく作品と呼べる様なものが無い。広く取った会場全体で、ベニヤの簡単な間仕切りが立てかけられ、そこに通路があらわれている、それだけ。総数1000枚!
そのベニヤ板で作られた通路の隙間に過去の作品(作業?)の写真が飾られている他には、現在進行形のプロジェクトが、まさに今、進行しているだけなのだ。たとえば、東京の路上生活者を観察したり、実際に路上生活をしたり、路上生活のためのダンボールハウスを作っていたり。炭鉱の記録を語り継ぐようなプロジェクトが進行していたり。展示時間内の会場で、実際に人が入り込んで、どこかのアトリエと変わりがないような光景でプロジェクトが進んでいっている。
そして、そのベニヤ板で作られた通路も一筋縄ではいかない。ベニヤ板はその片側に取り付けられた足によって自立しており、その足は砂袋で押さえられている。だから、通常、足のついているほうは『裏』のはずであり、『表』が通路を形成するはず。そして、おおむね、表の組み合わせによってその通路は出来上がっている。しかし、飾られている写真は、その隙間からわざと裏側に入った場所にあり、しかも鑑賞に適さない低い位置にあるために、近接して無理な姿勢で鑑賞しなければいけない。そして、普段は入れない美術館のバックヤードへも『通路』は続いており、どこが表か裏か、よくわからないまま、とにかく展覧会と呼べるのかよくわからない空間の間をさまよう。『通路』自体も製作中だし、その記録をとどめるための編集も中で行われている。日常、なにげなく受け入れている社会的暗黙のルールを、非常にわかりやすい形で脱構築してくれるようになっている…というか、単純に、なんか楽しいわけであり。
前回の横浜トリエンナーレの模型も飾られていたが、その精密な模型をみると、あのトリエンナーレはまさしく、全体で、川俣正の作品以外の何物でもなかったのだなあ、と思ったのだった。そして、この文章を思い出した。
http://d.hatena.ne.jp/eyck/20051017
中にはカフェもあって、グッヅが買えたり、さらにはお酒まで飲めるようになっている。話好きな男性がカフェの店員さん?で、いろいろ話してくれたが、ベニヤ板は一枚980円だそうな。炭鉱の写真のポストカードが素敵だったので購入、それから、手ぬぐいを1枚。
ま、しかし。どうも、今回の展覧会、コンセプトの実現で手一杯というか、会場が『カタイ』ところだったらしいので、それとの応接で疲れちゃったのかな、という面もあるような気も…。ま、もうちょっと考えよう。
http://www.kawamata.mot-art-museum.jp/

それから、同時開催されていた『MOTアニュアル2008「解きほぐすとき」』も。こちらは、金氏徹平の作品の作り出すなんだかわからない空間が面白かった。
http://www.mot-art-museum.jp/kikaku/105/
常設展示は、長きに渡った岡本太郎の『明日の神話』の展示がそろそろ終わる。まだ見ていない方は、この機会にぜひ。この後、渋谷と万博公園と広島、どこに行くかもう決まったんだっけ?

深川江戸資料館の通りの商店街で、親子丼と蕎麦の昼飯。美味しそうな豆腐と湯葉を購入。さて、次に行こう。