日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

日本トンデモ本大賞2009


豊島公会堂は築50年のかなり古い建物。入口入ると右側に、コミケの3日目そのままの雰囲気の物販スペースがあり、客層と言えばこれがまた、最近はコミケでも若者の流入もあって濃度が薄まった感じだったが原液のあたりの方々がわっちゃりとおおぜいいらっしゃって、初めてなのに初めてじゃない、猛烈な既視感が押し寄せる会場。平均年齢はわりと高い。2階までかなりぎっしりの会場で、幕が開いてオープニング、稗田おんまゆらがステージに上がって諸注意を述べるのだけれど、いかにも学園祭ノリのキレの悪い動きと内輪受けムードぷんぷんで初めから温度の高い客席に、忘れたかった古傷がずきずきとうずきだして、うわあこれから4時間どうなっちゃんだこれ、と若干後悔しはじめたことをここに正直に告白するけれども、まあ概ね杞憂だった、その後はきちんとエンターテイメントだったことも、合わせて正直に告白しておきたい。
山本会長のアニメオープニングで会場沸いた後に登場した司会は立川談之助、アシスタントが声。談之助師匠はちゃんとプロの仕事に徹しておられてえらいなあ、って当たり前ですが、それから10周年記念研究発表と題して、ノストラダムスの予言は実は今年あたっていたんだよ!な、なんだってー!(AA略)という研究発表。OHPを使った紙芝居形式の発表が懐かしさを誘う。そして、『と学会エキストラ』と題して、普段の例会でこんな発表をやっています、と、日本のフリーメーソンの本部に行ってきました、とか、『ひとりぼっちの性生活』の紹介とか、世界中のちんこグッヅの紹介とか。ちゃんと観客を意識した聞きやすいプレゼンテーションで、エンターテイメントだなあ、へえ、っと思った。中でも、中央大の先生による、最近の地図や教科書の中国地名表記がぜんぶカタカナになっちゃっててワケワカラン、という話が面白かった。これはトンデモで扱う領域ではないな、割と深刻な問題かもしれない。
休憩を挟んで今回の大賞候補作発表。山本弘会長が本の紹介をして、壇上に並んだお歴々があーでもない、こーでもないとしゃべる、という展開。常連さんいわく、山本会長は話が聞き取りにくいということで、なるほどカツゼツが悪かったり聴衆を意識しない早口になったり、会長しっかりしろ、という感じでしたが、まあ今日はまだ頑張っている範疇だったようです。
今回の候補作は、以下の4点

すべてのオタクは小説家になれる!

すべてのオタクは小説家になれる!

聖書は日本神話の続きだった!

聖書は日本神話の続きだった!

新・知ってはいけない!?―日本人だけが知らない世界の100の常識

新・知ってはいけない!?―日本人だけが知らない世界の100の常識

『胎内記憶』は、母親の胎内にいたときの記憶がある人がいる、みたいな割合穏当(穏当なのか?)な話からはじまり、へその緒を通じて外の風景がフォトンで見える、とか、胎内の赤ん坊とコミュニケートするのに自動筆記を使うとか、精子卵子のときの記憶とか前世の記憶とか、子供が話すいい加減な記憶の話を全肯定するためにいろんなトンデモを引用してみました、みたいな本だった。平和な本である。
『すべてのオタクは小説家になれる』は、そもそも今回の候補作になる部分含めていろいろきな臭い話が漂っているのだけれどそれは適当にぐぐってみてください。外野がとやかく言うことでもないが、いろんな意味でトンデモ本の範疇に入れるのはどうなの?という本。山本会長がイチイチ突っ込みいれていて、たしかにごもっともではあるんだけれど、それは単著のある人ゆえの思い入れみたいな部分もあるだろうし…とでも言いたい話であり。いや、ネタになるとか、今日のイベントのエンターテイメント性から考えれば、良い本なのでしょうが。唐沢俊一若桜木虔とホソキンの確執に触れたりとか、お約束の展開もあり。ちなみにもちろん、『唐沢俊一検証blog』の人が、いきなり会場から、論争ふっかけたりとかはしてませんでした。
『聖書は日本神話の続きだった!』は、聖書と日本神話の関連性を、ダジャレ込みでああでもないこうでもないと書いた、トンデモ本としては古典に入れたくなるような本。だからオリジナリティには欠ける。よくまあ、あっちからこっちからネタ引っ張ってきましたね、という。ヤハウェは母上のことなんだよ!な、なんだってー!(AA略)帯の推薦者はベンジャミン・フルフォード。どこまで行ってしまわれるのですか…。ちなみにこの作者、JAXAの講演とかになぜか紛れ込んでいるらしい
『新・知ってはいけない!?』は、まあ船瀬俊介という著書名だけでおなかいっぱいでしょうが、千島学説からアポロは月に行ってないから9・11陰謀説から、よくまあなんでもかんでも陰謀を全部鵜呑みにして本にまとめられますね、という本で、この先生症状がますます悪化している…。とは言え、足利事件とか、まともな内容もあるんですが。この人、どの程度本気で本を書いているのはよくわからない。
どうもトンデモ本も過去の焼き直しみたいな内容が多くなって、オリジナリティに欠ける。まだオリジナリティがありそうな『胎内記憶』に投票しておいたけれど…どうなるか(トンデモ本大賞は、会場からの投票できまるのです)
続いて、ある意味で本日のメインイベント、坂本頼光さんの活弁。坂本さんとはサークルの先輩つながりで何度か飲んだことはあるけれど、ちゃんと活弁を聞くのはこれがはじめてかもしれん…。松竹蒲田撮影所の昭和10年作、『子寶騒動』のドタバタナンセンスも面白かったが、その後の『サザザさん』の、今日完成したばかりの新作がすさまじい。これはすごい。なんという、あんまり表に出ることの無い才能の使い方…。ちなみに、サザザさんは2005年から毎年1本作っていてこれが5作目。1作目はyoutubeで見られますなんだか小粒だったトンデモ本の記憶も薄れたあたりで大賞の発表。『胎内記憶』109票、『すべてのオタクは小説家になれる』83票、『聖書は日本神話の続きだった!』140票、『新・知ってはいけない!?』141票で、船瀬先生めでたく受賞となりました。おめでとうございます。オリジナリティも専門知識もなくてもトンデモ本大賞は取れますね、とうまく落ちがついたところで終了。4時間15分のイベントでした。正直、坂本頼光さんが一番面白かったです…