日毎に敵と懶惰に戦う

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土田酒造の、モンドセレクション金賞受賞酒『誉國光』を飲む

『B-Promotion』というところのプロモーションで、群馬県の土田酒造株式会社の『誉國光』という日本酒をいただきました。土田酒造は群馬県利根郡川場村にある酒蔵
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明治40年の創業で、日本酒の蔵元としてはそれほど歴史が長いわけではないですが(日本酒の蔵元は、それこそ江戸時代から連綿と続いているところがいっぱいあるのだ)、戦前、品評会に連続入賞すると与えられる『名誉賞』を受賞するなど、品質の高い酒造りに対する意識が昔から高い蔵元のようです。
今回いただいた『誉國光』もモンドセレクション2009金賞受賞ということで…。いやまあ、日本人しか知らない賞だ、とか、いろいろ言われているモンドセレクションだし、そんなものに出品していないでよほど美味い酒は沢山ありますよ。ですが、それでもいろいろレベルのある中で『金賞』を取るのは品質の高さの証だろうし、なにより、日本酒全体の地位向上という意味では良いじゃありませんか。
私は日本酒大好きなんですけど、会社の飲み会なんかで行く居酒屋では、まず日本酒は飲まないです。なんだこりゃ、みたいな日本酒だ出されて、がっかりすること必定だから。周囲に日本酒好きがいて、じっくり教育される機会のあった若い人なら、日本酒の多様さ、美味しさ、奥深さに触れることが出来るでしょう。だけど、日本酒にこだわりのない居酒屋で、ちょっと試しに飲んでみた日本酒がロクなもんじゃない…ロクなもんじゃない日本酒を出す店はいっぱいあるのです。それは酒そのものの品質もあるし、店や問屋の無理解による保存状態の酷さである場合も多い…そういうきっかけ、日本酒はおっさんの飲み物、というイメージで日本酒を敬遠する若い方も多いでしょう。そして、以後、日本酒を飲もうとは思わない。
そういう人にも日本酒を知ってもらう、認識を改めてもらうために、モンドセレクションも素晴らしいじゃありませんか。元々好きな人はモンドセレクションを受賞しようがしまいが、うまい酒を知っているのだから。で、さて、お味のほう。モンドセレクション受賞酒が不味い、ということになると、これは逆効果以外の何物でもないのだけれど
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パッケージは、私はもう少しすっきりした…単色に銘柄どーん、というほうが美味い酒ってイメージがあるけれど、これは私の個人的な好き嫌いですので。山田錦60%の純米酒、日本酒度+2、酸度1.6。日本酒の味の違いで、最初に思いつくのが『甘い辛い』で、おおむね、日本酒度が+だと辛口、-だと甘口、というイメージが強い。しかし、そう単純なもんでもないんですね。以前、日本科学未来館で行われたイベントで

『甘口・辛口』について。まずは『ロ・ハのどちらが辛口でしょうか?』ということで、評価。ん、『ハ』と答えたけれど…。みんな評価が分かれているな。日本酒の『甘口・辛口』というと、所謂日本酒度が一般的な評価軸になって、とりあえず、日本酒度は表示されていることが多い。ほいで、この日本酒度、溶け込んでいる成分が重いほどマイナスとなり、溶けているのはほとんど糖類だから、マイナスになると甘口、と評価されるわけです一般的には。
ところが、今回の日本酒、ロは日本酒度+6で、ハは日本酒度+3。なのに、ハのほうが辛口に感じられるのはなぜなのか?
人間の味覚として、甘口辛口の基準になるのは、ほぼ、その日本酒の酸度と、含まれるぶどう糖の量であるとのこと。実は『ハ』のほうが酸度が高い。そして、比重は『ハ』のほうが重いのだけれど、ぶどう糖の量は『ハ』のほうが少ない。それで、『ハ』のほうが辛口に感じるのです、ということ
だから、日本酒度だけだと甘口・辛口はなんとも言えないのだね。こういう、酸度やぶどう糖が表示されているともっとわかりやすい、と。
日本科学未来館で『科学で味わう日本酒』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

ということで、日本酒度だけではわからないことが多い。この誉國光にはぶどう糖の数値こそ表示されていませんが(というか、ぶどう糖の数値が表示されている日本酒など見たことがない)、酸度がきちんと表示されてるのは味の判断の一部にもなるし、えらいっす。
まあ、ぐだぐだ理屈ならべてもアレなので、とにかく試飲。と言っても、日本酒は、やっぱり食事と合わせてなんぼ。ある日、別の日、おかずをいっぱい揃えて飲んでみました。


うーむ、まるっきり酒飲みの食卓なんだけれど、手のこんだものが全くないな…。ちょっと反省して、ちゃんと作るようにしないと。で、この酒。吟醸酒のような開けた瞬間の香り高さは無いし、独特の特徴、というようなものもあまりない。口に含んだ瞬間、ちょっと水っぽいかな?みたいな印象があるんだけれど、口の中に程よく米の甘味、うま味が広がって、そして適度な酸味があってさっぱり、あまり残らない。あー、これはあれだ、ほんと、食事用の酒ですよ。
で、肉から魚から、いろんなものと合わせて飲んでみたんだけれど、とにかく一緒に食べるものを選ばないですね。なんとでも合う。日本酒はそもそも、ワインなんかに比べて、よっぽど食べ物に合わせやすい酒なんですが、これは特に合わせるものを選ばないと思いました。単体としてものすごくうまい!みたいな酒ともちょっと違うし、私はもう少し個性の強い酒のほうが好みだけれど、真面目に作られていて、飲み飽きしない酒だな、と思いました。

あ、このグラスは、以前に駒場の日本民芸館で買った、津軽ガラスのもの。厚手のグラスが手に馴染んで、冷酒を飲むときは大抵これです。
日本酒って、すごく地域性の強い酒だから、やっぱり、合わせる食べ物って土地のものが一番いいんだよね。日本酒が一番うまいシチュエーションって何かと考えると、旅先でふらっと入った信頼のおけそうな店で、土地のもの、旬のものを食べながら飲む…ってシチュエーション…あー、酒飲みたくなってきたな、とにかくそういうの。
『野武士のグルメ』、そして今宵も酒場で - 日毎に敵と懶惰に戦う
ひとりで旅先で飲むときの、なんというか、久住昌之の言葉を借りれば

頭の芯が少ししびれていくような感じ。
ひとりで日本酒を飲んだ時独特のものだ。
ふたり以上で話しながら飲むと、パーッと開く花が、開かず蕾のまま色づきながら頭の中で膨らんでいくような。
これ、でもけしていやな気分ではない。

というのが、まったくもって幸せなんですよね。今回のお酒にも地のもの…と思ったんだけど、群馬だとこんにゃくか?とか思って、まあ何も用意しませんでしたが。とにかく、合わせるものをあまり選ばないお酒でした。
ついでに、これもいただきもの

新酒鑑評会の入賞酒、非売品もいただきましたので、これも。新酒鑑評会の入賞酒は、それ用に特別に作ることがおおいので、普通はあまり飲めないのよね…。この大吟醸のほうは、華やかな香りの、まさに『鑑評会用』だなあ、って酒でした。
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酒蔵 誉国光 日本酒3点