日毎に敵と懶惰に戦う

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東京国立博物館『中国 王朝の至宝』

東京国立博物館で開催中の、日中国交正常化40周年、特別展『中国 王朝の至宝』のブロガー特別招待会というのがありまして、行ってまいりました。
『特別展 中国王朝の至宝』特別展示品の国宝「阿育王塔」など一級国宝がすごい
東京国立博物館 - 展示 日本の考古・特別展(平成館) 日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「中国 王朝の至宝」
解説してくださったのは、トーハクの学芸企画部長、松本伸之さん

まずビックリなのが、よく今回、無事に展覧会が開催できたな、ということ。ご存知の通りの日中情勢なので、中国関係のイベント・展覧会は続々と中止されている。日本で行われる中国関係の展覧会も、貸し出しをしてもらえなくて中止になったものが相当ある。そんな中で

松本部長らは9月、作品借用のため北京に滞在したが、尖閣諸島を巡り中国各地で反日デモが頻発した時期と重なった。中国側との交渉の末に借用許可を取り付けた松本部長は「4日間眠れぬ交渉が続いたが、国交正常化後40年にわたる日中の文化交流の積み重ねが(中国側の)理解につながった」と話した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121108-00000081-mai-soci

中国じゅうの博物館を駆けずり回ってなんとか展示にこぎつけたらしい。東京国立博物館は、門外不出の『清明上河図』を貸してもらった実績もあるし
東京国立博物館『北京故宮博物院200選』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
長い間の中国との信頼関係とか人脈とかごにょごにょとか、いろんなものの成果なんだと思われまする。
さて今回の展覧会、中国歴代王朝の貴重な文物を紹介する、という内容なんだけれど

対決!ということで、ほぼ同時代に存在した2つの王朝、前後して出現する2つの王朝などを対比させる、という企画内容になっている。たとえば、紀元前2000年頃の王朝である、夏・殷と、蜀

私たちが中国と言われてイメージする美術品って、青銅器とか、青磁白磁とか、書画なんじゃないだろうか。しかしながら中国の王朝は…まあわざわざ知識の無い私が解説するまでも無いことですが、統一王朝である秦が登場するまで全土を支配した王朝はなかったわけで、それぞれの王朝の間にもそれぞれの(繋がりながらも)断絶が存在している。そんななかでも、夏・殷、斉・魯、漢、南朝、宋…というような王朝は、私たちがイメージしやすい中国文物の伝統を引き継いでいる。

一方、同時代に夏・殷と同時代に存在した、四川の蜀、あるいは斉・魯と同時代に存在した長江流域の楚、北方民族の影響の強い北朝や遼というような王朝は、中国のイメージとは違う独特の文物を数多く生み出していて、今回の展覧会、そのあたりの文物に焦点を強くあてており、最近の遺跡発掘の成果物が数多く出品されている。たとえば、蜀の不思議な仮面『突目仮面』

これかなりでっかい。また、文字の記録はあまりないが『南方の強国』とされる南方の国、楚の文物も印象が強いものが多い

統一王朝のものでも、漢の文物に比べて、秦のそれは豪快で大きかったり

……すいません、あんまり写真がちゃんとしてなくて…Takさんのところでも見てくださいね
「中国 王朝の至宝」 | 弐代目・青い日記帳
対比しながら、中国文明の一様では無さを感じてもらえれば、という展覧会なわけです


これまで見る機会のほとんどなかった、蜀・楚・遼、といった王朝の文物が、やはり非常に興味深いものがありました。唐代は、世界的な帝国となる過程で色彩豊かに、国際色が強く、さまざまな影響を受けた文物がたくさん生み出されて明るさがあり、衰退とともにいかにも中国らしい文物になっていく…というのもなかなか面白かった。文物は時代を映す

最後に展示されている、北宋時代の『阿育王塔』の豪華絢爛さ、大きさは、存在感があって、見飽きない出物でありました

それぞれのコーナーには王朝の代表的都市の紹介映像とかがあって、中国好きな人にはたまらんであろう内容なんだけれど。そして出品物も一級文物が半数以上で、なかなか見る機会の無い展覧会であることは確かなんだけれど。いかんせん、タイミングも悪くてなあ…。お客さんの入りが悪いみたい。いただいた資料に『お得情報 この展覧会のチケットで『出雲』展も見られる!』と書いてあって、ちょっと涙を誘いました…。
どっちのついででもいいので、見に行ってみてください。釘宮が音声ガイドに出てるし!