火曜日、本日はお休み。熱海で15時からの予定があって、それ以外は特に決まっていない。さてどうしよう。とりあえず西に向かうことにして、7時に家を出る。
7時28分の熱海行きの普通列車に乗ってからも、つらつら考える。当初、熱海の福島屋旅館で日帰り入浴するのを、ひとつの目当てにしていたんだけれど
Twitterで検索したら、公式ではないけれど、本日は臨時休業という知らせが舞い込んできた。これでかなりテンションが下がる。しかし、他にもいろいろ楽しみはある。真鶴で途中下車して、Takiさんの真似をしてみようとか
湯河原で降りて、まだ行ったことのない、人間国宝美術館に行ってみようとか。そんなことを考えながら、次第に空いていく東海道線の車内で私が読んでいたのは、この本
伊東のハトヤホテルのような、かつては団体客と家族連れで大いに賑わった日本型リゾートホテルは、その後寂れていく方向だけれど、改めて、そのレトロぶりも含めた面白さがあるのではないか。そして、そこへの宿泊を中心に、一泊二日で旅に出よう…。
そんな素敵な本。書店で手に取り、これは面白そうだ!と出版社を見たら京阪神エルマガジン社。エルマガの本が大好きで、エルマガの本だったら何でも信頼して買えるぞ、と思っている自分としては、また手のひらの上で踊らされている!くやしい…!でも、かんじちゃう!みたいになっていたわけですが、しかしとにかく、速攻でレジに向かったというわけ。
この本、熱海のニューアカオを取り上げており、なんだかすごい建物なので、入らないまでも外観だけでも見てみよう。なんなら日帰り入浴をしてもいいけれど、13時からで、1700円とちょっと高いし、パスかな。
そして、ちょっと駅からは離れている。そこまで行くからには、ついでに近くに面白いものは無いか…とgoogle mapを見ていくと、熱海城がある。熱海城といえば…と思い出したのがこの記事
読み返してみたら、熱海城以外にも、日帰りで入れる『日航亭大湯』とか、元旅館だったところで今は文化財として見学できるようになっている『起雲閣』とか、面白そうなところが出てくる。
実は上記の記事、昨日、東京エスカレーターの中の人の記事で知ったばかりなのだ
旅の計画をするときに『Googleで検索するときも「熱海 zaikabou」のように検索しています。』なんて面映いことを書いていただいているけれど、むしろ、こちらがこの記事に助けられ、であります。ありがとうございます。
そしてそして、昼飯はどうしよう…とぼんやり思いつつ、熱海城のあたりをgoogle mapでぐりぐりしていたら、『台湾茶』云々(でんでんではない)という店を、偶然見つける。これは興味深い。
『台湾茶専門 吉茶松濤館』とある。お茶のほかに食べ物もいろいろあるらしい。これでお昼は決まる。お昼が決まると、ここまでの情報を組み立てて、概ね、旅程が決まってくる。
まずは梅の季節だから、俗っぽいところかもしれないけれど、行ったことのない『熱海梅園』に行ってみよう。それから『日航亭大湯』に入り『起雲閣』を見学。バスか何かで『熱海城』に向かい、『台湾茶専門 吉茶松濤館』でお昼。『ホテルニューアカオ』をなんとなく見物して、駅に戻ってくる…。熱海駅に14時40分集合だから、これぐらいかな。予定は途中で変わるかもしれないけれど、そんなふうに概ね固まったところで、小田原駅を過ぎ、窓の外には静かな海が見えてくる。
ところで、今回は候補には入らなかったけれど、土日祝だったら、予約して『熱海の家』には行きたいところですね
重要文化財 ブルーノ・タウト「熱海の家」 旧日向別邸 (きゅうひゅうがべってい)|熱海市役所
熱海駅、9時着。ここでは降りない。9時8分発の伊東線に乗って2分、隣の来宮駅まで。熱海の市役所とか、熱海梅園は、この駅から近いのです。少し坂道を登り、熱海梅園に到着。
ちょうど熱海梅園は梅の見頃となっていた。BGMを流しているけどいらないなー、猿回しとか寄席とか足湯とかいろいろがんばっているけれど、うーーん、観光地だなーとか思いましたが。とにかく、梅はきれいでしたね。
平日の朝の9時半回ったばかりだけれど、 お年寄りを中心に、それなりのお客さんが入っていた。
中に韓国庭園があり、どのような謂れで?と思ったけれど。
森喜朗と金大中の熱海会談があったこと、そして、韓国ではじめての女性飛行士が、羽田からソウルに飛ぶ途中に墜落死し、熱海で荼毘に付されたことに因むようだ
熱海梅園、梅まつりの期間中は出店も多いのだけれど、中に、MOA美術館のボランティアの方による出店も。
MOA美術館のボランティア…?としばらく考えて、あぁ、と納得したわけですが。抹茶とお菓子で300円で提供されている。
MOA美術館は2月5日リニューアルオープン、熱海梅園の半券持参で、入館料が300円引きになるとのこと。今回のリニューアルオープンでは、尾形光琳の国宝『紅白梅図屏風』も、もちろん出ますからね。
早足で熱海梅園を見て周り、梅園を出て、再び来宮駅。
ここからは歩いてまわる。小沢昭一の小沢昭一的こころを思い出す名前の坂道を下って
まずは温泉、と思い『日航亭大湯』に向かったのだけれど。ちゃんと調べておけばよかった、火曜日は定休日であった…ざんねん。
そして休みとは知りつつも、福島屋旅館にも念のためいってみたけれど、やはり休みは休みなのであった。福島屋旅館はお湯も良いので、是非、日帰りで行ったら入るべきですよ
この近所に昔は『熱海温泉上宿新宿共同浴場』というところもあったのだけれど、残念、これも2009年に閉鎖されてしまった。熱海に来る人は基本的に泊まりが多いから、日帰り湯はあまり流行らないのかな。ならば仕方が無い、お風呂は適宜考えることにして。ぶらぶら歩いて『起雲閣』へ
やや狷介な印象の受付のおばちゃんに510円なりを支払って入った『起雲閣』は、熱海の三大別荘と言われるだけのことはある素敵な空間であり。戦前は東武鉄道の根津さん(根津美術館の根津さんですね)が所有していて、戦後になって旅館になり、多くの文豪が泊まったところだそうで。
こんなところに泊まってみたいねー、と思いつつ、庭園のまわりを囲んでたつ建物を徘徊したのだった。
じっくり、庭園も見学して出て、
」
さて、これからお昼に向かう。熱海の周遊バスに乗るのが良いのだろうけれど
ここからならば、目的地まで歩いても30分までかからないみたいなので、歩き出す。歩き出したけれど、
なかなか、これは、トンネルもあり。
ものすごい階段もあり。
冬にもかかわらず、大汗が噴出してくる。九十九折の道を登り、熱海城が眼下に見えたころに
たどり着いたのがこちらのお店。
中に入れば、素敵な空間が。聞けば2年半前にご自宅を改装して店をはじめたそうで、ご主人が自ら台湾に行き、鹿谷などで台湾茶を仕入れているという。
限定品 凍頂烏龍虫允茶を注文。1,600円とややお高いのだけれど、こんな素敵なお菓子が出てくるのですよ。
お茶、1煎目は入れてもらう。
なんとも甘い香りと味わい…ウンカが齧ったウーロン茶だけれど、東方美人ともまた違う、烏龍茶らしさのやや青さのある感じと、奥深い甘さが両方立っている
2煎目以降は自分で。アルコールランプでお湯を用意してくれているので、好きなようにいただけるのです。台湾茶は何煎でもいけますからね
そして、頼んだ食事も出てきて、シュウマイも、鳥のおこわも、どちらも本格的でおいしゅうございました。メニューはこれ以外にもたくさんある。
なにしろ、お客さんが自分1人しかいないので、自宅のように寛いで、窓の外の静かな海を見ながら贅沢なお茶タイムなわけでありまして。
標高は160mあるとのことで、そりゃ、登ってきたら大汗もかくわけだわ。
お茶は5煎入れても、香をかいだだけでは弱くなっているけれど、まだまだ、口に含めば、奥のほうから甘い香りが漂ってくる。今回はお茶は1種類だけにしたけれど、追加の茶葉は300円から用意してくれるらしい。
今度来るときは、ランチセット3000円というのがあるので、人と来てそれを頼んでみようか。思いもかけず、熱海で贅沢な時間が過ごせたのだった。
お店を出て、坂道を下り、熱海城の外観だけ眺めて、下に拡がる熱海の街を見て、
秘宝館は今日はパスして。
さらに坂道を下っていくと、ホテルニューアカオにたどり着く。
アカオリゾート公国とは何もの…。そして、ホテルの立つ断崖絶壁の周囲は公園として整備されており、これもアカオリゾートがお金出しているんだろうか、熱海市が整備しているのだろうか、なんだかとにかく、どこからでもホテルを眺めるなかなかに絶景な公園なのだった。
ところどころ、若干、廃墟感がありますね…
展望トイレ、そんなに展望しなくても
さて、そろそろ時間も13時半、熱海駅に向かってぶらぶら歩き始めよう。
途中、当今ではなかなか出せない味の素敵なファザードの宿を見たり
熱海という消印がなくなることを確認したり
おそらく立派な旅館だったのでしょう、玉乃井本館という宿の跡地があったり
糸川に、早咲きの桜が咲いているのを見たり(コスプレで撮影をしている人がいた)
ホストかな?みたいな店主がいる和菓子屋で買い物したり
そして、熱海、駅前には今でも、こういう、小さな旅館がたくさんあるんですよね。
1人旅のときは、ほんと、こういう宿が良いんですよ。早く泊まらないと、みんな、いつのまにか、無くなってしまうよね。
そして熱海駅に戻ってくる。熱海駅は去年の11月に建物がすっかり新しくなった。
そして駅前には大きな足湯ができているけど、人が入りすぎている。
みなさん、足を洗わずに入るわけでして、これだけの人数が入っていると、お湯、しっかり循環してい手ほしいな、と思いますよね…
冒頭で紹介した本には、この店は紹介されていなかったけれど、この佇まいも良い。
都内で金曜の夜に飲んでいた微妙な関係の男女がその場の勢いで電車に乗って熱海まで来たはいいがろくな宿も無く駅前の古びた旅館をなんとか見付けてその夜はなんだかとにかく盛り上がってしまい寝不足気味で迎えた朝に窓の外を見ながらぼんやり会話も無くトーストを気怠そうに齧って…そうな駅前喫茶店。
これ、Twitterに投稿して、実話じゃないの?って言われたんだけれど、実話ではありません。すみません、ほとんど、私の一番好きなエッセイである、この本からいただいた内容です。
- 作者: フェデリコカルパッチョ,Federico Carpaccio,木暮修
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さて、待ち合わせ時間まではあと40分。立ち寄り湯にふられっぱなしの今日の熱海だけれど、最後の砦が熱海駅前にある。
その名も、熱海の駅前温泉。浴槽は4人も入れば一杯の、小さな銭湯という風情のお風呂だけれど、 しっかりかけ流しの熱海温泉であり、地元のおじいちゃんと一緒に、ゆっくり浸からせてもらいました。
この後、待ち合わせて向かった先については、記事を改めて。
驚きと感動を抱えて駅に戻ってきたのが17時過ぎ。熱海の宛ての店はお休みだったので、そのまま小田原に向かい、4人で『ふじ丸』でお安く魚を堪能。
帰りも普通列車に揺られて帰ってきたのでした。よい熱海のたびだった