日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

「食と現代美術part1」といろいろ

展示スペースに入ろうとすると「すみません、そちらは有料の展示で…」と止められる。基よりお金は払うつもりなのだが、それらしい案内も表示も無いし、ふりで来た人は絶対わからんぞ、と。広くて天井の高いホール部分もギャラリーになっていて、藤浩志氏の、食品系のビニールゴミを使った作品を展示。これ、すべて1997年以来、自分で消費した食品のゴミらしい。
Report 藤浩志企画制作室
中田市長がテレビ神奈川の番組の取材に来たらしい。中田さん、腰が軽い、じゃない、フットワークが良いなあ。んで、作品。思わず小学生のような感想『ごみをこんなにすてないようにしようとおもいます!』が出てしまうが、とにかく、純粋にその量に圧倒される。展示スペースは広々していい感じだけど、形が不規則で柱が多いので、使い方は難しそう。こないだ来た時はコーヒーを無料サービスしてたんだけど、今日はお金を取ってた。
地下のスペースも見た後、いったん外に出て、同時開催中の「BankART Studio NYK」のほうへ。途中、三益という店でドライカレー850円也まあ美味。さて、NYKは「日本郵船会社」のNYK。本当に倉庫だったところなので、建物も奥まったところにある。

倉庫の脇を抜けて階段を2階に上がると、ギャラリーになっている。デッキからは赤レンガ倉庫などが良く見える。この日は冷たい雨だったけど、天気の良い日は気持ち良さそうだ。


今回は、「食と現代美術」と同時開催で
Evolution Cafe
Reading Room
というのもやっていて*1、チケットは共通。ギャラリーを全部使っている。ギャラリーのスペースは相当広くて、使いでがありそう。特にどれがどの区分、と意識せずに見て回る。こーいう現代美術系の展示会に良く来るのは、普段の生活だと意識しないこと、考えないこと、見たり聞いたりしないことを体験できるからなので、目先が変わるのは楽しい。感想メモ。
みかんぐみ」は、なんでこう、何にしても、小奇麗で尤もらしくて訴えるものがないんだろう。私の感性の問題だとは思うんだけど。なんつーか、まあ面白いんだけど、何を見ても「いかにも」な感じだ。実際に建築に関わったりしているし、アートってよりは実業の人たちなんだろうな。
井上尚子さんの作品、自分が巨大なジュースの中に入ったような気分になる。靴を脱いで上がると、粉ジュースのような匂いが微かに漂って、氷の「かろーん、かろかろ」という音が聞こえてくる。
東野哲史さんの、『インターネット上で採取した「文字化け」をただひたすら原稿用紙に書き写す』作品が、馬鹿馬鹿しくていい。いかにもな昭和風文筆家の書斎を作りこみ、原稿用紙が散乱しているのだが、書いてある中身はすべて文字化け。ついでにその作品が「15000円限定10部」で売られたりして、洒落がきつい。
Book Pick Orchestra」は参加型の作品。袋に入って中身の見えない膨大な量の古本から一冊を選んで、その本を買う権利が与えられます、というもの。買わない場合は、メモ帳に本から気になった部分を引用して、次に手に取る人にメッセージを残してください、ということらしい。そして、封の切られた本は誰でも買うことが出来る。
このひとたちは実際に古本屋を営んでいて、

本のある生活をより身近にしていくために、そして人と本とが出会う素敵な偶然を生み出すために、実験を続けるユニット

であるらしい。なるほど、確かに、タイトルを見て興味を惹かれない本を手に取る機会は少ない。特に、本屋や古本屋や図書館なら、まだ装丁が気に入ったり、偶然の産物で手に取るかもしれないが、ネット書店だと、検索ワードに無関係な本、しかも売れていない本と出会う可能性はゼロに近い。その代わり、ネットの情報の中で、少しずつ関係のある情報を辿って行って、いろんな情報に接触する楽しみがあるわけだが。
今回の作品だと、もっと直接的アプローチで「知らない本」に出会ってしまおう、ということ*2。実際、これは結構面白い。私が手に取った本はhttp://www.bijutsu.co.jp/bss/BSS_files/Midue_top.htmlの「加納光於」特集で、加納光於を知らない私は、一生手に取ることがなかっただろう本だ。加納光於は結構な大物らしいんで、知らないこと自体はお恥ずかしいんですが。なかなか興味深く読む。買わないけど。
面白くなったので、もう一冊やってみる。今度は『日本の朝ごはん』。吉野家を紹介する段で、「ガス釜で炊いたほっかほっかの政府米」という表現がかなりツボ。褒めてるんだかけなしているんだか。さらにもう一冊。『探偵たちよスパイたちよ (文春文庫)』の文庫版じゃないほう。小林秀雄江戸川乱歩が対談していて、小林秀雄が「ミステリーを読んで、間違いを見つけたと思ったら、じつは有名な間違いらしくてガッカリした」と言っている子供っぽさが面白い。
ついでに、人が開けた本の中に、小沢昭一永六輔の『陰学探検』があったので購入。メッセージカードを見たら、「まず目次を読んでください。怪しいと空気が漂っているので注意してください」と書いてあった。本来の「食と現代美術」よりも、こっちの「Reading Room」のが面白かった。まあ、広くて使いでのありそうなギャラリーが横浜に出来たことは慶賀。お堅い展示会じゃなくて、いろいろと面白いものが今後も見れそうだ。
外に出ると、「アトリエ・ワン」の「ホワイト・リムジン・屋台」と「こたつパヴィリオン」が置いてある。どちらも、去年、大阪のキリンプラザでビデオを見たやつだ(id:zaikabou:20041129)。


冷たい雨が降る中、作品なんだか、捨てられているんだかよくわからない状態で、可哀想なことになっていた。こたつパビリオンは、中にはいると暖かくて居心地が良かったが、知らない人と一緒に入っていたら気まずいだろうなあ。この日は誰もいなかったけど。つうか、作品だと気がついていないんじゃないかしらん。

*1:それにしても、最近は展覧会のご案内もblog形式なんですね。アップデートしやすいもんねぇ

*2:ほりえもん騒動の「興味のある情報だけを載せた新聞」の是非論争にも援用できそうな話だけど、めんどくさいのでパスしとく。