日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

amazonのレビューについて少し

三浦展氏と言えば、サークルクラッシャー関連でちょっと話題になった用語「かまやつ女」の提唱者な人であり、元パルコにお勤めで今はシンクタンクの代表をやっている人。私にとっては、郊外の問題点をキャッチィーにばっさり明快に語るんだけど、おいおいばっさり大雑把にやりすぎ、良くも悪くもマーケティングの人だなあ、な印象なわけである。
ちょっと話は飛ぶ。
10+1のvol.38『建築と書物』の鼎談が、隈研吾×五十嵐太郎×永江朗で、相変わらず永江朗のインタビュー術は上手いもんだな、と感心したり、隈研吾はなぜああも執拗に磯崎新に言及するんだろう、とちょっと可笑しかったり、五十嵐太郎は相変わらず八面六臂だな、しかし「専門じゃないけど建築とか都市論とか興味あります」な人、まあ要するに自分のことですが、そう言う人の語りの成分の3割位は五十嵐太郎でできていて、自分も御多分に漏れずなことで改めてこっ恥かしかったり、まあその、なんだ、つまり、結構面白かったんであるが。本題はこの先だ。
ここしばらくで面白かった建築にかんする書物をあげてください、というところで、永江朗が次の2冊を挙げていた。

リーディングズ 都市と郊外―比較文化論への通路

リーディングズ 都市と郊外―比較文化論への通路

前者は郊外論を100年くらいのスパンで見渡すのに便利、後者はショッキングで強烈、と言及している。後者の監修は三浦展氏ですね。んで、前者の方に興味を持ったので安ければ買おうか知らんとamazonで検索したと思いねぇ。
値段が高い3990円もする。図書館で借りようと思う。レビューを見ると、なんと三浦展氏が実名でレビューを書いているではありませんか。三浦展氏なら発表するメディアもきちんと持っているはずで、なにもこんな金にならん文章書かなくても。
ぽちっとな、三浦氏の書いたレビュー一覧を見ると、自分の著書にしたエディターコメントまで表示される。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/cm/member-reviews/-/A1WA08TRTD0U4E/
amazonってこういうところがいまいち不可思議なシステムだけど‥。著者も購入者と同じようにIDが付与されて管理されているんだろうか。ともかく、自著へのコメント用のIDで、他所にもコメントをつけたのだな、と理解する。んで、そのエディターコメントが、読者レビューに反応するカタチで書かれたりする。
さて次に後者の本のレビュー欄を見てみると、これがなかなか盛り上がっている。いつものようにばっさり郊外を切り捨てちゃった結果、読者レビュー欄で反発を招いて、それに対してけっこう強めのコメントをエディターコメント欄でしたらしい。
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んで、その後、問題があると思ったのか理由はわからないけど、再びコメントを書き換えたらしい。おお、なんてインタラクティブなメディアなんだ、amazonのレビュー欄。amazonのレビュー欄はこういう風にも使えるのだな、というか、黎明期はこういうカタチを期待されたメディアだったのだろうか?などと考える。
私もこの本は立ち読みだけど読んで、ちょっとセンセーショナルに過ぎるという印象は持った。けれども、この本についているコメントは感情的過ぎていただけない。三浦展さんの返し方も大人気ないとは思うけど。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4896918827/customer-reviews/
しばらく前、日垣隆の有料メルマガで、amazonのコメント欄が話題に上り、

店頭ならPOPに相当する場所に、その商品を全否定するような文章を平気で外資が掲げることの意味を、百歩譲って仮に認めるとしても、匿名で罵倒する否定的「レビュー」は、往々にして匿名氏の嫉妬や自己顕示の温床になる、と指摘したのです。*1

なんてことが言われていたので余計興味深かった、というか。amazonのレビュー欄は同一人物が何回も書き込めるわけじゃないし、そんなインタラクティブな働きを期待できるようなメディアじゃないはず。それがこういう混乱ちっくなことになっても、amazonはノータッチなんだろうか。
結局、素人批評なんて「それ単体」でのコメントにはあんまり価値は見いだせなくて、
http://d.hatena.ne.jp/zaikabou/20041127#p1
でも書いたように、そのIDの人が他の本にどんな印象を持っているのか、という情報のつながりがあって初めて意味を見出せるものだと思う。あの小さな欄で、万人を納得させられるような論理構築をした論文が書けるわけも無く、結局はある程度、印象批判にならざるを得ないのだから。だけど、2chやアスクユーやCinemaScapeと違うのはamazonはそれそのものを売るためのメディアであるということなわけであり。
amazonは、本を買う人に「このレビュー欄は所詮シロートが書いたものだから信用しないでくださいよ」というエクスキューズを投げ出しちゃっていいのか、という問題であり、本を買うのにいちいちその人の書いたほかのレビューを見て「ああ、こんな人のことは信用しなくてもいいな」と思う時間を取らせるのか、という問題。リテラシーの低い人にとっては、あのコメント欄は購買意欲を萎えさせるのに十分なんじゃないか。
だらだらと書いたが、言いたかったのは
・10+1の鼎談が面白かった
・「都市と郊外」は読もうと思う
三浦展amazonに実名レビューを書いてて、周辺がちょっと面白い
amazonの読者レビュー欄ってどうよ
以上4点でした

*1:注追記 指摘はhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104188018/のvp_kid氏に対するもの。なお、この本の改定新版であるhttp://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4104188026/のコメント欄には、日垣隆の言及に呼応したと思われるレビューが載っている。