ANPO
戦後のアーティストが沢山出てきて、作品が紹介されたり本人がしゃべったりするドキュメンタリーみたいだ、という以外、特に前知識無しのこの映画。実は見に行こうと思ったきっかけが、こないだ行った、ブログタイムズの2周年パーティーなのだよね
ブログタイムズ2周年記念パーティーに行き、バズマーケティングの現状を知る - 日毎に敵と懶惰に戦う
この場であった方から
ドンドン日記
チラシをいただいて見に来た次第。そして今日は、上映終了後に、リンダ・ホーグランド監督と石内都さんのトークショーもあるというではありませんか。
138席のシアターに、半分弱のお客さんの入りで上映開始。この映画ね、いや、ちょっと予想に反してというか、とても素晴らしい。日本の社会問題に深くコミットした作品、絵画を制作するアーティストとその作品を次々紹介しながら、石内都と横須賀の街を歩き、そして1960年の安保闘争のうねりへ。止むにやまれず、何かに突き動かされるように、運動に入り込んで行ったり、作品を制作したりする当時の情熱が、さまざまな人の語りや、あるいは映像、作品から浮かび上がってくる。何がそこまで、当時の人々を突き動かしているのか?アメリカに対するアンビバレンツな感情。
運動にやぶれ、しかしかつての情熱とは無縁の私とは違う、今今、まさに目の前の問題を抱えている沖縄へ。
日本とアメリカの関係を問い直すだけでなく、アメリカ人の目から作られた作品を見ることで、日本と中国や韓国の関係についても自問自答させるような作品。しかし決して押しつけがましいのではない、暑苦しい主張をしてくるのではない。だけれど、いろんな人の語りを積み重ねることで、見ているほうとしては考えざるを得なくなってくるのだな。当時のあの熱狂はなんだったんだろう?岸伸介に対する憎悪とも言える感情はなんなんだろう?自分のものとして感じられていない沖縄の問題はなんなのだろう?はてなダイアリー周辺のその手の記事を読んでも頭の上を通り過ぎるだけの数々のことが『実感』を伴って押し寄せると思う。*1
とにかく、紹介される作品が、いちいちかっこいいんですね。如何にも反戦とか批判が前面に出た諷刺漫画とか作品とか、ていど低くて大いにしらけるんですが、ああいう即物性ではない、ずんとくる、なんか迫るものがある、かっこいい作品群が紹介されている。天皇の写真コラージュでも、山下菊二のはクオリティが段違いなんだ。ここで紹介される絵画を集めた展覧会があったら、すぐに行きますね。
上映終了後、監督と石内都さんのトークがあり、とにかく石内さんがかっこいい。そして監督が熱くて、面白い。監督の考え方、言葉の数々に感銘を受けた。日本に生まれ、宣教師の娘として育ち、小学校の時、原爆投下の話を聞いて衝撃を受けたことが原体験になっている監督。まずはゴリゴリの社会映画、主張を押し付ける映画ではなく、絵がカッコイイ、面白い、という視点から見られるように作りたい。日本映画を見る中で、60円を境に映画のトーンががらっと変わり、いったい60年に何があったのか?そこから、濱谷浩の写真や中村宏の絵画との出会いがあり、安保闘争について考えていくようになった。そういう軌跡をたどった監督ならではの切り口。
この映画、保阪正康と半藤一利、そしてティム・ワィナーが歴史の語り部を務め、加藤登紀子は出てきて歌うわ、細江英公まで出てくるわ、横尾忠則も大いに語る、沖縄の写真家、石川真生の言葉が重すぎし…若いところでは会田誠やら風間サチ子やら、“アーサ女”の山城知佳子も出てくる。ああそうだ、『沖縄プリズム』は、極めて刺激的な展覧会だったよ
国立近代美術館『沖縄・プリズム 1872-2008』 - 日毎に敵と懶惰に戦う
そう、出演陣の豪華さも非常に興味深い映画なのですよ。是非、見て欲しい映画です。
*1:そういうものを批判しているわけじゃないのです。自分の中で何らかの『実感』が生まれたとき、それらを思い出してハッとなったり、より深く思考すること助けてくれるのです。とても重要なのです。でも“きっかけ”にはならないのではないか、と思うのです