日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

馬鹿と煙は…

六本木ヒルズによく行く。あそこに対して、いろいろな思いを持つ人がいるだろう。多分、否定的な考え方の方も相当多いと思う。
私も、10年前、近所の学校に通っていたので、あの辺りは結構フラフラしていた。おたくで地味な人間だったので夜な夜な六本木で遊ぶようなことは無かったが、六本木WAVEには、AXISやABCと共によく足を運んでいた。ビル全体がなんだか特別な雰囲気を持っていて、店の奥で見たことも無いようなCDを眺めていたのを憶えている。何しろ中高生の話なので、ろくに物は買えなかったが…。だから、猥雑な魅力を排除して「殺菌された街、管理された街」を作り上げてしまった六本木ヒルズに対する反発は、多少は理解できるつもりだ。日ヶ窪住宅は知らなかったけど。
そして勿論、再開発の裏でおきている問題の色々。地上げ、住環境、人口減少と再開発の必要性、そのほか…例えば
http://www12.ocn.ne.jp/~keyaki/index.html
のような話…についても、一定の勉強と理解はしている。

だけれども、私は六本木ヒルズが好きで良く行く。森美術館の会員組織があるんだけれど、それの会員にもなっている。高い展望台から見える街、美術館、映画館、それから図書館。

六本木ヒルズは虚構の世界だ。
わかりやすい「上昇志向な皆さん」のための施設。観光して、展望台を眺めて、「高いなあ」と言いながら1500円くらいの昼飯を食い、洋服屋は入る気にもならないので、雑貨屋でなにか買ってかえるぶんには、わからない空間。だけどその気になればだだ漏れに見せびらかされている、六本木ヒルズクラブだとかアカデミーヒルズだとか高層マンションだとか。

六本木ヒルズクラブは、さまざまなジャンルで活躍するインフルエンサーが集い、専門分野を超えた対話やコミュニケーションによって、互いの創造力を刺激し合う会員制クラブ。
http://www.roppongihills.com/jp/facilities/rhc/

オープン当初、「インフルエンサー」って…と、相当小馬鹿にされて、ネタにされたと思う。この六本木ヒルズクラブからして、要するに金を払えばろくに審査も無しに会員になれるシステムで、結婚式をすると一年間限定の会員になれる「なんだそれ」なシステム。スノッブという言葉は六本木ヒルズのためにあったのではないか、と思うほど。
職住接近、都心に住む、文化と共にある暮らし。森ビルがいくら崇高な理念を展開しても、それは、一部の、本当にごく一部、一握りの勝ち組にしか手に入らない。
六本木ヒルズはその崇高な理念の元、「広場」を作った。だけど、そこで、真に自由な活動が行なわれるわけではない。六本木ヒルズは管理外の出来事を認めない。たとえばこんな…
http://www.h5.dion.ne.jp/~cube/0_spike/spike_news/report/zenhinren_vs_rhills.htm
いや、まあ、全貧連は正直馬鹿だとは思う*1けど…このような想定外の猥雑さを絶対に認めないところだ。
六本木ヒルズはその崇高な理念の元、「美術館」を作った。だけれど、そこで、彼等の期待に反したアーティストの行動はあらかじめ排除された。
http://www.realtokyo.co.jp/japanese/column/ozaki77.htm
http://www.realtokyo.co.jp/japanese/column/ozaki78.htm
いや、まあ、私が森ビルの人間だったら「すいません、これをカタログに載せるのはちょっと…」と言ったかもしれないけれど。
それでも。それでも。森ビルは、六本木ヒルズは、本気で、裏で人が何人か「どうかなっても」構わない意気込みで*2街を作った。本気で手を抜かないで虚構を。最後の仇花の虚構を作った。そして、やせ我慢の崇高な理念を、背負わなくていい、いろんなものを勝手に背負っている。そういう部分に惚れてしまったのです。言葉のセンスはもうちょっとなんとかして欲しいけれど。
やせ我慢の旦那芸。やらない善よりやる偽善。森ビル一味の皆さんに、このような言葉をお送りして、誉めたいと思う。

ええと、で、結論としては、馬鹿と煙は高いところが好き、って話なんですよ。いやその、展望台が高いところにあって好きだなあ、という。

*1:チラシに奥島粉砕とか書いてあるけど、この人達は、核〇の活動家と縁があるんでしょうか。それとも洒落?

*2:本当にどうにかなった、という意味ではありません。それぐらい本気で、という意味です