日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

五十嵐太郎『美しい都市・醜い都市』

http://www.utsukushii-keikan.net/
これは『美しい景観を守る会』のサイト。
http://www.warui-keikan.net/
これは『悪い景観を守る会』のサイト。
伊藤滋一派の『美しい景観を守る会』は、毒々しい看板に溢れ、高速道路の高架が縦横に走る景観を悪い景観と言う。『悪い景観を守る会』は、住宅都市整理公団の…あるいはデイリーポータルZでも知られる大山総裁が立ち上げた、そんな景観こそが僕らにとって美しいものだ!というサイト。
http://blog.livedoor.jp/sohsai/archives/50665429.html
そう、美しい。こういう、都市の風景を美しいと愛でる人が、今たくさんいるし、本も出ているし、日本のベッヒャー、wamiさんの工場DVDまで出ようかと言う昨今。
http://d.hatena.ne.jp/wami/20061019
とは言え、積極的に美しいと、萌え萌えだと言う人はまだまだ大勢ではない。それでもしかし、その都市風景がはじめから「あった」世代の人間にとって、その風景はけして不自然で排斥させるべき風景ではなく、それすらも郷愁の対象にも成り得る、原風景となる。だいたい、あなたがたが取り戻したい、懐かしい風景ってなんなの?いつの時代なの?どんな価値観で美しいって言ってるの?もしかしたら、新しい公共事業を生み出すためだけに「景観を取り戻す」なんて言っていない?…
日本橋の上にかかる首都高速をめぐる論議を嚆矢に、都市の景観について論議を巡らせるのが

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

美しい都市・醜い都市―現代景観論 (中公新書ラクレ)

の本である。元々、いろいろな雑誌に書いた沢山の文章を、都市景観という切り口で一冊にまとめたので、全体を貫く結論、対案、というものが示されているわけではない。というか、五十嵐太郎は、敢えて対案や結論を導こうとはしていないかもしれない。とにかく、都市景観というものについて今一度考えてはくれないか、そういう本だ。平壌の、完璧に計画された都市を見て、それに抗いがたい魅力を感じてしまう…そんな五十嵐太郎から、とにかく、景観について考えてみてよ、と投げられた本なのだなと。
それはそれなのだが、途中、ディズニーランドについて書いた章で

10分間以上も立体化されたねずみのアニメ顔と向きあっていると、よく見なれたものがしだいに奇妙なものに思えてきた。異常にデカイ頭、大きく見開いた目、笑いを凝固した口、はり出したほっぺ。こんなものが、なぜ喜ばれるんだろう。実は誰もちゃんと、その顔を見ていないのではないか。徹底的な明るさの背後で、どこかおかしい夢の国。

いや、それはゲシュタルト崩壊しただけで、ディズニーに責任おっかぶせぶるのは可哀想なのでは。


ところで、実は五十嵐さん、『悪い景観を守る会』をまったく知らなかったらしい。
http://www.cybermetric.org/import/from_twistedcolumn.cgi?key=1108
それと、これも、ふむふむ、と思った意見。
http://skumbro.cocolog-nifty.com/edo/2006/11/post_4ebc.html
石川初さんによる、「緊急討論:首都高速埋設と日本橋川の景観を考える」のレポートは大変充実している。この本のエッセンスを凝縮したような内容。
http://fieldsmith.net/bslog/archives/2006/08/post_400.html