日毎に敵と懶惰に戦う

はてなダイアリーから引っ越しました。酒と食い物と美術と旅と横浜と建築と演芸と…

2016年 展覧会ベスト10

今年も、毎年恒例、自分が見た中での展覧会ベスト10を記録しておく時期になりました。毎年書いてますが、あくまでも自分が見た中でのベストなので、注目度が高くても見逃したものは多いし、もし見ていたらベストに選んだかもしれないものも多いです。その点、あらかじめご承知おき願います。

おもな見ていないものとしては、国芳国貞、美の祝典、ゴッホゴーギャン、ダリ、モランディ、チンポム、三宅一生、土木展、岩佐又兵衛、大妖怪展、高島野十郎、吉田博、速水御舟茨城県北、瀬戸内…あたりでしょうか。

全体的に、この1点が、とか、全体的に作品が粒ゾロイで、というよりも、展覧会の企画自体が気に入ったり、自分の中でこころ動かされるものがあって、選んだ展覧会が多いように思います。作品そのもので評価すると、禅展とか、ルノワール展とか、若冲展とか、ポンピドゥーセンター展とかが、もっと上位に来ますね。

 

1.横浜美術館村上隆スーパーフラット・コレクション』

古美術から現代アート、その他なんでもかんでも。少なくとも現代アートにおいて、個人で…はもちろん、企業や美術館でも、日本でこれ以上のコレクション持ってるところなんてあるんだろうか、というすごい質と量。それが洪水のように押し寄せてくる。自分勝手な剛腕コレクター村上隆の、妄想のとんでもない結晶。こんなもん、再現しようったって、二度と再現できないのではないか。とにかく、カーニヴァルのような展覧会でした。図録もいろんな意味で印象的だった。

 

2,兵庫県立美術館『1945年±5年』

日本の戦争と美術と歴史を考える展覧会の集大成、決定版。1940年のまだ明るさの残る世相から、琉球朝鮮満州南方戦場銃後焼跡…と、時代を追って描かれる場面は多岐にわたり、美術、そしてわたしたちの生活は戦争という状況を前にして如何に身過ぎ世過ぎしてきたのか、を追っていく。あるいは戦争が行き詰った状況下における私たちの精神性のあり様が、美術作品を通じて露呈されていました。

 

3.サントリー美術館『鈴木其一展』

それまでの琳派の作家から時代を下って琳派の表現の総仕上げという風もあり、それ以外も数多く取り込んで江戸絵画の総仕上げという風でもあり、とにかく今回、鈴木其一という存在に改めて目を見開かされるような、素晴らしい内容でした。個人蔵の作品が数多く出展されているのも素晴らしかった。

 

4.静岡市美術館・芹沢銈介美術館『芹沢銈介生誕120周年記念展』

わたしはもう、芹沢銈介については正常な判断が出来る段階ではないのでありまして、偏愛でありまして、今回の旅はほとんど巡礼でありまして、もうほんと、尊いとしか言いようがありませんので…。とにかく、手許におけるものということは、どれもこれも欲しい!という気持ちばかりが立ちまして、鼻血もんでありまして、本気でグッズ売られたらワイ破産してまう…状態でした。

 

5.大阪市立美術館『壺中之展』

コレクションは素晴らしいのに宣伝ベタな大阪市美が、とうとう本気を出した!という感じの展覧会。一級品がずらりと並ぶのはもちろん素晴らしいのだけれど、それ以上に、現在進行形の、大阪人の矜持の結晶、それが大阪市立美術館なのだと。大阪市立東洋陶磁美術館の世界的コレクションと併せて、まさに、大阪の誇りなのだと。それをしっかり示してくれた展覧会でした。

 

6.『旅するルイ・ヴィトン』展

ルイ・ヴィトンが、伊達や酔狂ではなく、ブランドイメージをより確固たるものにして、今後何十年かの商売を見据えて、莫大なカネを掛けてこのイベントやっている。ハイブランドを本気を見せられた、妥協一切無しの本気の展覧会でした。

 

7.BankART Studio NYK『柳幸典 ワンダリング・ポジション』

柳幸典はいまどき珍しい、メッセージをストレートに提示しているアーティストであるのだけれど、それを造形的に高いクオリティで実現している。はじめから国際標準な感じがある。そういうものを、BankARTの広い空間をしっかり活かして、とても高いレベルで見せてくれた。内容のしっかりした展覧会でした。なんだけど、相変わらずのここの箱の宣伝ベタ…というか、する気が無い感じがもどかしいのです。

 

8.東京都美術館ボッティチェリ展』

ラーマ家の東方三博士の礼拝、バラ園の聖母、書斎の聖アウグスティヌス書物の聖母、美しきシモネッタの肖像…などなど、ボッティチェリの名作が目白押しで、まさに眼福、久しぶりに余計な言い訳無しで本物の力で本気で殴りに来てる展覧会で、素晴らしかったのです。

 

9.目黒区美術館『色の博物誌』

内容が濃すぎてすごい。国絵図と浮世絵に使われた画材に注目し、浮世絵を再現した立原位貫の仕事をフューチャーし、会場には藍紅その他、多種多様な色の画材そのものや原材料が山盛り。日本画浮世絵の色彩に興味のある人は必見の内容で、最終日に滑り込めて良かった。図録の出来も、ほんとうに良かった。

 

10.水戸芸術館田中功起 共にいることの可能性、その試み』

私達は社会において期待される役割を演じることがしばしばあるし、場を理解すれば尚更、その傾向は顕著になりがちだ、ということ。私に期待される役割を演じない私を期待されて演じる、という場合もあるだろうし、それは時に意識的であり、時に無意識である。そんなことを考えながら、ずいぶん長い時間滞在した展覧会。

 

以上がトップテン。今年はアートイベントも各地で多い年でしたが、あまり巡れず。さいたまトリエンナーレはやはり目の作品が印象的。そして、初日に全部めぐった、あいちトリエンナーレは記憶に残っています。

 

ギャラリーで見た中では、gallery916の川内倫子 「The Rain of Blessing」素晴らしかった。

 

神奈川芸術劇場『塩田千春 鍵のかかった部屋』も強く印象に残る赤

 

東美特別展は、買う気満々の人たちの濃さがすごくて印象的でしたねえ。

 

 

さて、では、続いて、11~20位までは順不同で

 

 

千葉市美術館『初期浮世絵展』

江戸時代になってから、我々がよく知るところの『浮世絵』がどのような経緯をたどって誕生していったかを、江戸における文化の動向を探りながら極めて精緻に解説してくれて、見たことの無いような貴重な作品を、多数、海外からも集めた、浮世絵好き必見の内容でした。

千葉市美術館『初期浮世絵展』と清澄白河 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

サントリー美術館『広重ビビッド』

こんな状態の良い、色鮮やかな浮世絵、見たこと無い。六十余州名所図会も、名所江戸百景も、ほんとに昨日刷ったかのような素晴らしさ。線クッキリ、発色見事、ぼかし美しい、キラもそのまま、生で見とかないと勿体無いものでした。

サントリー美術館『広重ビビッド』、国展、渋谷のお肉 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

奈良国立博物館信貴山縁起絵巻

鉢も蔵も俵も飛ぶ愉快な絵巻物を自由に堪能。日本三大絵巻のひとつ、全三巻、全場面を会期通じて公開は史上初のこと。どの巻も描き込まれた人々が躍動感があって愉快でした。

奈良国立博物館『信貴山縁起絵巻』『なら仏像館』と、尼崎『和酒おのろじ』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京国立近代美術館『ようこそ日本へ』

戦前の一時期、海外からの日本観光の盛り上がりを豊富な資料で示した、お好きな方には堪らない内容。とくにジャパン・ツーリスト・ビューローが制作した『日本3週間の旅』25分が非常に面白かったのです。

東京国立近代美術館『ようこそ日本へ』での1936年の日本観光が面白い - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

国立西洋美術館クラーナハ展』

萌え絵師で売り絵師のクラーナハに、現代との繋がりをいろいろと見ることができる、なかなか稀有な展覧会であり、実物を見なければ実感できないそのつやつやな質感を堪能したのです。

国立西洋美術館『クラーナハ展』萌え絵師売り絵師のクラーナハに現代との繋がりを見るのこと - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

府中市美術館『燃える東京・多摩 画家・新海覚雄の軌跡』

社会的リアリズムで内灘、砂川闘争、そして労働運動を多く描いた画家の大規模回顧展。労働者、農民に寄り添い、力強く描かれた人々の姿に圧倒される。労組の宣伝ポスターもとても良かったです。

東峰、三里塚…成田空港周辺を巡り、そして砂川に思いを馳せる - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

京都国立博物館東京国立博物館『禅- 心をかたちに-』

作品があつまった、という意味ではNo.1じゃないでしょうか。禅宗の成立から日本での普及、さらに禅文化によりうみだされた美術品を広範に扱う展覧会で、禅決定版!という様相。息遣いまで感じるような書を見て行き、禅のこころが少しだけ呑み込めたような気になる京都と、とにかく名作目白押し!みたいなノリの東京の違いも興味深かったです。

京都国立博物館『禅- 心をかたちに-』と、京都駅前飲み屋観察 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

大阪府中之島図書館『おどるばけるつどう』

長崎くんち、大曲馬、朝鮮通信使琉球行列、船乗込、天神祭、芝居小屋、博覧会、米相場、英国公使参勤、鉄橋渡初、住吉踊り、淀川夕涼み、商店の賑わい…ありとあらゆる行列集団の絵があり、描かれた人々を見るのが楽しい、素敵な展覧会でした。

大阪市立東洋陶磁美術館『朝鮮時代の水滴』、国立国際美術館『THE PLAY』、大阪府立中之島図書館『おどるばけるつどう』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京都美術館若冲展』

絵と静かに向かい合う、というものではなく、みんなで一斉に顔近づけて作品を覗き込み、うわぁ、すごいねぇ、と頷き合う、そんな一種のイベント的な空間、お祭りでした。でも作品が素晴らしいのはもちろんだし、一つのムーブメントとして、参加しておいてよかったです。

ミッフィーカフェ、うさぎやカフェ、東京都美術館『若冲展』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

◆芦屋市立美術博物館『吉原治良

丸を描き続けた求道の人というイメージが強かったですが、実業家やプロモーターの側面などを、芦屋と大阪の豊富なコレクション、資料を通じて丹念に紹介される良質な展覧会でした。

芦屋市美術博物館『吉原治良展』と、ヨドコウ迎賓館と、みっふぃーと、伊丹の門限 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

 さらに、21~30位までを順不同で

 

◆日比谷図書文化館『祖父江慎+コズフィッシュ展 ブックデザイ』

あの頃見て、手にとって、開いて、ワクワクしたあの本もこの本も、みんな祖父江慎さんがやってたのだなぁ。そして装丁は組版とか含めた総力仕事なのだな、と改めて感じるとても楽しい展覧会でした。

東京都美術館『ボッティチェリ展』、日比谷図書文化館『祖父江慎+コズフィッシュ展 ブックデザイ』、関東学院中学校旧本館 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

◆クリエイティブセンター大阪『クロニクル、クロニクル!』

全部合わせたら床面積で1,500平米…それ以上の空間4フロアに20人近いアーティストの作品が展開されるのだけれど、空間を無駄にしている感じが無い。余白を含めて、余す事なく見事に使い切っていて、空間そのものがいちばん楽しかった展覧会かもしれません。

CCO クリエイティブセンター大阪『クロニクル、クロニクル!』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

森美術館六本木クロッシング

全作品感想を書いてしまった展覧会。現代美術におけるこういう形式の展覧会にあらためて思いを致したのでした。

森美術館『六本木クロッシング2016 僕の身体、あなたの声』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

埼玉県立近代美術館『ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて - 』

どこにもここにも幸せな瞬間が切り取られているし、ラルティーグさん自身も、ラルティーグさんの被写体も、すごく幸せそうだし、見ているだけで幸せな気分になる展覧会でした。

西宮夜勤明け、若冲狂想曲、ラルティーグ、六本木 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

国立民族学博物館『見世物大博覧会』

軽業曲芸見世物小屋、角兵衛獅子、覗きからくり菊人形、細工見世物生人形、サーカスに海外からの珍獣に、御神楽や女相撲、そして口上。ありとあらゆる、人々の「好奇心」を満たす見世物を網羅して紹介する、資料豊富な興味深い展覧会でした。ちょっと視点として気になるところはいろいろあったんだけれど。

国立民族学博物館『見世物大博覧会』と、住吉『もろもろ』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

国立国際美術館森村泰昌 自画像の美術史 「私」と「わたし」が出会うとき』

30年間に渡る自画像作品のまさに集大成と言える展覧会。藤井光撮影による映像『「私」と「わたし」が出会うときー自画 像のシンポジオンー』が良かったのです。

国立国際美術館『森村泰昌 自画像の美術史 「私」と「わたし」が出会うとき』と、大井町『そのだ』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

目黒区美術館気仙沼と、東日本大震災の記憶』

その写真に、ことばでは語れぬ数多くの思いを読み取り、また、リアス・アーク美術館の、民俗資料の収集も行い地域の歴史を語り継ぐ美術館としての、震災の歴史を語り継ぐ決意をも感じた展覧会でした。

豊島区役所旧庁舎『コラプスイブ』、ラファエロ前派、目黒区美術館『気仙沼と、東日本大震災の記憶』 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

東京国立近代美術館トーマス・ルフ展』

撮影自由にしたために、わたしは何をやっているのだ、これは何だ、写真とはなんだ、とぐるぐるいろんな思いが巡った展覧会でした。

東京国立近代美術館『トーマス・ルフ展』と東京都写真美術館『杉本博司ロスト・ヒューマン』を見る - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

国立国際美術館『エッケ・ホモ』

剥き出しの人間存在と不在を投げ出して、人間性回復を高らかに謳い上げる挑発的展覧会。クオリティ高くて、同時に、とりあえず投げっぱなしにするこの美術館の良さが良さがよく発揮されていた展覧会でした。

大阪へ。国立国際美術館『エッケ・ホモ』、阪急百貨店の三沢厚彦ショーウィンドウ - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

平塚市美術館『香月泰男丸木位里・俊、そして川田喜久治』

こんなに力強いメッセージを冒頭に提示した展覧会は、なかなかお目にかかれない。拭いても拭いても、記憶と魂が浮かび上がり染み出してくるような作品が並ぶ展覧会でした

羽根林道からヤビツ峠、平塚市美術館『香月・丸木・川田』展、そして江ノ島の自転車旅 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

これ以外にも、国立新美術館ルノワール展』は久しぶりに印象派って良いな、と素直に思わせてくれる展覧会だったし、東京都美術館『ポンピドゥーセンター展』も粒ぞろいだったし、早稲田演劇博物館『あゝ新宿』の空間構成は見事だったし、出光美術館『大仙厓展』はほんとうに集大成の内容だったし、三菱一号館美術館『ジュリア・マーガレット・キャメロン展』はいろんな意味でニヤニヤできる展覧会だったし。

横浜美術館『BODY/PLAY/POLITICS』『複製技術と美術家たち』はどちらもこの美術館の良さが出ている展覧会だったし、あざみ野コンテンポラリーは今回もクオリティ高かったし。国立近代美術館『恩地幸四郎展』も丁寧な展覧会だったし。西洋美術館『カラヴァッジョ展』も優作目白押しだったし、森美術館『宇宙と芸術』か噛めば噛むほど面白い展覧会だったし、馬の博物館山口晃展も期待以上でよくまとまった内容でしたし、東京都美術館『木々との対話』も好きな作家が並んでいました

とにかく、楽しい展覧会をたくさん見せてくれて、今年もありがとう、と思ったのでした。

なお、一言言いたい、と特に思った展覧会は、以下の3つ。東京都現代美術館『キセイノセイキ』特に最終日など見ておりますと、現代美術ワナビーの自己満足みたいな、なんだこれ、というような。東京都写真美術館杉本博司ロスト・ヒューマン』見世物小屋嫌いじゃないですけど、どうなんでしょうかあれは。東京都庭園美術館『クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス_さざめく亡霊たち』ボルタンスキーの大ファンであるだけに、東京で最初の個展があれは残念…などと思ったのでした。あれれ、去年もこの最後に杉本博司を選んでいるな…

まあともかく!来年も楽しい展覧会をたくさん見られればいいなあ、と思うのでありました。

 

去年まではこちらです。

2015年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う

2014年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う

2013年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う

2012年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う

2011年 展覧会ベスト10 - 日毎に敵と懶惰に戦う

 

また、今年も大変お世話になった、Takさんの青い日記帳には、トラックバックなどでいろんな人のベスト10が集まってくると思いますので、合わせてどうぞ(はてなブログトラックバックができないんだけどね…)

2016年 展覧会ベスト10 | 弐代目・青い日記帳